福島県双葉町で生まれ育った大森梨江さんは、県下最大のレジャー施設「スパリゾートハワイアンズ」のダンシングチーム“フラガール”の一人です。
小学生のときに見たフラガールたちの華麗なダンスに魅了され、「フラガールになる!」と決意した梨江さんでしたが、そのためには血のにじむような努力が必要でした。挫折しそうになることもありましたが、そのたびに励ましてくれる愛犬チョコが、彼女の心の支えとなり、ついに夢を叶えることができたのです。
しかし、2011年3月11日、東日本大震災が発生、未曾有の大災害は、梨江さんの実家のある双葉町も襲いました。梨江さんの実家は、福島第一原発からわずか2キロの距離にあります。
震災の日の夜、町のスピーカーが「緊急退避」を放送、消防士たちから「早く、逃げてください!」と追い立てられ、双葉町の町民全員がほとんど何も持たずに、家を飛びだすように夢中で逃げるしかありませんでした。
この時、多くの動物が置き去りにされました。チョコもです。
翌日、福島第一原発で爆発事故が発生、危険な放射性物質が大量に放出されてしまいました。
そのため、双葉町は『警戒区域』に指定され、立入禁止となってしまいました。避難した人たちは、今度は家にもどることができなくなってしまったのです。
動物を置いてきた人たちは、まさかそんな長期間、家に帰れないとは思ってもみなかったので、残してきた家族同然のペットのことがとても気がかりでした。梨江さんやその家族もそうです(大変悲しいことですが、政府の無策の影響は、被災者だけでなく、これらの動物たちにも及びました。残された動物の多くが餓死したのです)。
震災後、梨江さんたちフラガールは、「復興」を合い言葉に、避難所を慰問して被災者を励ますなど、全国各地を回っていました。
その間も、ずっとチョコのことを忘れることはなかった梨江さんですが、動物を救済するボランティアの人たちに保護されたチョコと、奇跡的に再会できる日がきたのです。