それは、クリスマス・イブの夜のこと。1匹の白い犬が星になりました。
その犬の名は、シロ。
わずか1年でしたが、シロは愛情をいっぱい受けて旅立てたのです。
シロは虐待を受け、動物管理事務所に連れてこられ、『実験動物』として病院に売られた犬でした。
『実験動物』というのは、医学の研究や、薬の開発のために、痛く苦しい目にあいながら、人間の身がわりとなって、生きたまま実験をされる、痛ましい動物のことです。
体を切りきざまれ、毒を飲まされ、苦しむ状態をつぶさに観察されながら、なぜ、自分が、こんなにひどい目にあわされるのかもわからずに、ひとりぼっちで死んでいくのです。
シロは、病院ですぐに脊髄神経を切断するという、とてもつらい手術を受けました。切られた神経が、どうやって回復するか調べる実験だといいます。
しかし、シロは手術の後、どんな手当もしてもらえませんでした。傷口が化膿し、下半身に膿がたまっていましたが、手術した医者たちは見にも来ません。手術で体力が衰えている上に、疥癬という皮膚病に感染し、全身の毛が抜け落ちました。
このまま放置されれば死んでしまう寸前で、シロは動物保護団体の人たちに助け出されたのです。
そして、かわいそうなシロの姿がいくつものテレビ番組で放映され、新聞や雑誌にも大きく取り上げられると、日本中からシロへの励ましと、病院への抗議が殺到しました。
これは、捨てられ、実験される犬たちと、そうした不幸な犬たちを救うために戦う人々の実話です。
※この作品は2012年9月当社より刊行された『ハンカチぶんこ実験犬シロのねがい』を一部加筆修正の上、リサイズ編集したものです。