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■ ドキュメンタル童話シリーズ 


こころの介助犬 天ちゃん

難病のキヨくんの「妹」はレトリバー
第7回「わんマン賞」グランプリ作品

小学校中学年以上向き
ベッドギアーとリードはいのちの絆
「乳児重症ミオクロニーてんかん」という難病と闘っている
キヨくんと、セラピー犬「天ちゃん」の実話です。
てんかんの発作でいつ倒れるかもしれないキヨくんは、
ヘッドギアをして、天ちゃんと散歩します。
ふたりとも言葉は話せませんが、心でいつもお話しをしているのです。


女優・石井めぐみさん推薦
愛する者に囲まれて、毎日をいっしょうけんめい生きていく。こんな
あたりまえの幸せを、溢れるほど感じさせてくれる素敵な本に出逢いました。


林優子 作 2004.07.07 発行  

ISBN 4-89295-305-9 C8093 A5上製・144頁・定価 1320円(本体 1200円)

 

はじめに

セラピー犬

 このお話は、重い「てんかん」という病気と闘っているキヨくんと家族、そして飼い犬の「天ちゃん」との暮らしを書いた実話です。
 私たちの社会には、人を助けるかしこい犬たちがいます。目の見えない人を助ける「盲導犬」、耳の聞こえない人を助ける「聴導犬」、体の不自由な人を助ける「介助犬」などです。このような犬は厳しい訓練の末に試験に合格して、国の法律で大切にされています。
 天ちゃんは法律で認められた介助犬ではありませんが、キヨくんを助ける「わが家の介助犬」なのです。キヨくんは病気のため、片言しかしゃべることができません。天ちゃんも言葉をしゃべれません。でも、天ちゃんとキヨくんは心で話しているとお母さんは信じています。




キヨくんのもう一つのお話

12年目のお・か・あ・さ・ん
みんなの心がやさしくなる奇跡の言葉

 

 

目 次

 

    キヨくんの発病

    キヨくん、犬の背中に乗る

    将基くん、チックになる

    犬がやってきた

    天ちゃんと暮らし始めて

    三人の兄弟ゲンカ

    夏バテする天ちゃん

    初めての家族旅行

    天ちゃんは船頭さん

    キヨくん、小学生になる

    悲しいお知らせ

    天ちゃん目ざまし

    天ちゃんの夏休み

    発作はあっても…

    リードが持てたよ

    ボールを投げられたよ

    おわりに

 

 

おわりに

 世界保健機構「WHO」では、てんかんとは「種々の成因によってもたらされる慢性の脳疾患であって、大脳ニューロンの過激な発射から由来する反復性の発作(てんかん発作)を主徴とし、それに変異に富んだ臨床ならびに検査所見表出がともなう」と定義しています。
 大発作といわれているものは、意識を失い、とつぜん倒れて手足がガクガクとけいれんするわけですから、子どもがはじめて見ても、それが〈ただ事ではない〉と気づきます。反対に体の一部、または全体的にピクッピクッとなるミオクロニー発作、とつぜん動作が中断し、ボーッとなる欠神発作など、大人が見てもわかりにくい発作もあります。

 発作が起きる原因はふつう、疲れ・睡眠不足・お薬の飲み忘れなどがいわれますが、〈SME〉にはその原因を取り除くことの難しいものがたくさんあります。興奮・入浴、そして約半数の患児が持つといわれている光過敏・図形過敏など、日々の生活をしていく上で防ぎようがありません。光では、ゲームはもちろんテレビ、クリスマスツリーなどに付けられる点滅する飾り、太陽の木漏れ日でさえ発作は簡単に起こってしまいます。図形過敏では、縞模様や水玉模様、エスカレーターに乗って足元を見るだけでも、発作は簡単に起こってしまいます。

 〈SME〉は、かかえる発作の種類も多く、発作は年齢と共に変わっていきます。キヨくんの場合でも、発作は五種類を数え、発作の多い時間帯は起きている時から寝ている時にと変わりました。起きてさえいれば大丈夫というわけではないので、ある意味、年がら年中、いつ発作が起きても不思議はないという状態です。
 ですからお薬も、たくさんの種類、たくさんの量になりがちです。このお薬にはこういった副作用(お薬を飲むことで大丈夫なところが悪くなってしまう)があると、わかっていながらも飲ませているお薬もあります。それでも、発作はなくなりません。

 一分一秒でもはやく、苦しい発作から解放させてやりたいです。
 一分一秒でもはやく、安全でよいお薬をつくりたいのです。
 そのために「きよくん基金」を募りたい。
 せめて、毎日ある発作の回数だけでも減りますように…。
 そして、いつか、いつの日か発作がなくなりますように…。

 その願いを少しでも現実のものへ近づけたくて、私は出版を夢見るのですが、それはかなり厳しいものでした。何度も私自身の文才の無さにくじけそうになりながらも、発作に苦しむキヨくんを見守る日々が、私をワープロの前に座らせたように感じます。
 この度、「わんマン賞」を受賞し、第一歩を踏み出すことができました。この本の出版にあたっては編集長の藤川進様、担当の佐々木照美様はじめ、ハート出版の皆様には心より感謝申し上げます。
 また、本の帯に一文と写真を下さった石井めぐみ様、巻末に一文を下さった白坂幸義先生、イラストを描いて下さった松浦ヒロミ様、「きよくん基金を募る会」におきましては、すでに多数の会員の方々が共に活動して下さっています。この場をお借りして、心より感謝申し上げます。
 そして何よりも私を支え続けてくれている夫、共にがんばってくれている長男へ、これからもよろしく!
     *    *
この本を手にし、読んで下さったあなた様へのお願いです。

 あなたの〈愛〉を少しだけ分けてください。
 〈少しの愛〉が、たくさんたくさん集まれば、奇跡が起きるかもしれません。
 あなたにとっての〈愛〉を少しだけ分けてください。
 〈少しの愛〉が、いろいろ集まれば、奇跡が起きるかもしれません。

 

キヨくんの主治医より―――白坂幸義先生

 てんかんには治りやすいものと治りにくいものがありますが、キヨくんのてんかんは本文にも触れられているように治りにくいものの代表です。キヨくんに初めてお会いしたのは2年ほど前ですが、この本の著者であるお母様・ご家族の皆様の常に前向きな姿勢には感動しています。キヨくんは、甘いもの・炭水化物を極端に制限したケトン食というきびしい食事療法をしていますが、以前お母様が工夫して作られたケトン食のケーキをもってこられ、そのアイデアにびっくりしたことがあります。
 この度、キヨくんとご家族のお話を出版されるということでまた驚かされたわけですが、その売り上げ利益をすべて、てんかんの研究基金として寄付されるとのこと、てんかんの一研究者として感謝しております。

 

著者紹介

■ 林 優子(はやし・ゆうこ) ■

 

昭和34年、兵庫県生まれ。昭和53年、神戸山手女子短期大学芸術科卒業。次男が生後6ヶ月でSMEを発病。家族の支え、人とのふれ合い、動物とのふれ合いに、閉ざしていた自分自身と次男の心が次第に開かれていく。その経験をもとに、てんかんの理解を深める活動として、てんかん協会と共に児童向けアニメを制作、NHK教育テレビに出演、体験作文においては内閣官房長官賞を受賞。学校大好きフォトコンテスト入賞。現在、「きよくん基金を募る会」を立ち上げ、活動中。

 

 

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