はじめまして。高野山真言宗僧侶兼カウンセラー、ときどき執筆家の塩田妙玄です。数ある書籍の中から、本書を見つけてくださり、ありがとうございます。
このようなご縁をいただきましたこと、嬉しく光栄に思います。
自己紹介の詳細は、巻末のプロフィールに譲るとしまして、早速本書の導入部分をお話させていただきますね。
本書は、私・妙玄が、2009年に人を介して紹介された、ある犬猫保護施設のボランティア活動を通して体験した事柄です。
私のボラ活動のお話は、他の書籍でもご紹介していますので、ぜひ併せてお読みいただけましたら嬉しいです(巻末参照してください♪)。
紹介された、その犬猫の保護施設は、「愛さん(私が呼んでいる愛称)」という高齢の男性が、寄付も募らず個人の収入のみで、もう25年以上やっている施設で、河川敷にほど近い場所にありました。
愛さんの保護施設は、犬猫が捨てられやすい河川敷の近くという場所柄、常時100匹以上の捨てられた犬猫を抱える施設で、多いときは160匹もの数に膨れあがっていたのです。これは寄付も募らない個人の保護施設としては、尋常ならざる数。通常これだけの数を抱えると、保護した犬猫のお世話も、手がまわらなくなりがちです。
ですが愛さんの施設は、そんな私の予想を遥かに超えた、清潔で愛情あふれる場所でした。設備自体はボロですが、細部にわたり犬猫の快適さが追求されています。過ごしやすい空間作りが工夫され、このように行き届いた環境の保護施設は、長年ペットライターをやっていた私でも、初めて見ました。ましてや個人が運営するという、その行動力と愛情の深さに衝撃を受けたのです。
そんな施設周辺の河川敷には、ホームレス集落が乱立し、一般の人が捨てていく犬猫や、流れてきた野良さんがひしめき合う場所でもありました。そんな状況の保護施設を見て、私は愛さんの施設をお手伝いするようになったのです。なのですが、そこは捨てられた犬猫の保護活動だけではなく、はからずも周辺のホームレスさんたちや、彼らが拾った捨て猫たちとも、関わりを持たざるを得ない状況になっていました。
初めて関わるホームレスさんたちは、謎のコミュニケーションパターンが多く、心理学を学んだカウンセラーである私も、困惑することの連続で、頭の中は?? と!! のマークが入り乱れます。
そんなハチャメチャな関わりの中にも、社会を捨てた彼らが、唯一関わりを持とうとする猫たちの存在があり、また不器用ながら、猫を通して人とのつながりを求める、彼らホームレスの泣き笑いの人生がありました。
そんな彼らが集まる集落では、もめ事・いさかい・ケンカなどの暴力・暴言・事件は日常茶飯事。警察や救急車、消防の出動も珍しくありません。
そんな世界と無縁だった私は、ときにはワタワタと慌てて、ときには忍耐と諦観を学び、そして、それでもときには、感動を共有し、泣き・笑い、なんと忙しい日々を送ったことでしょう。
本書は決して、美談でもなければ、お涙ちょうだいの話ではありません。
ホームレスさんは、やはり圧倒的にダメなところがあるから、ホームレスをやっている。そんなことも、また偽らざる事実です。
ですが、社会から捨てられた人と猫たちが、寄り添い、暮らしている生活がここ河川敷にあり、またはからずも、そんな彼らと猫たちの援助に尽力する、愛さんという博愛精神のアウトローの存在。
ここ河川敷は、悲しみと不条理という、世の刹那が凝縮された世界です。
輝かしい命と消え逝く命。そんな光と影を織り交ぜていく彼らホームレスの人生。
本書の内容は、強いて言うなら、あなたが知らないビックリ仰天! カルチャーショック満載の河川敷のホームレスと猫の事件簿。そして、そこに関わる愛さんと新米尼僧の仁義なき戦いの記録です。
存分に、驚いて、笑って、切なくなって、何かを感じてくださったら光栄です。
ようこそ妙玄ワールドへ。
どうぞ、お楽しみ♪ください。