日本大逆転

元東京・ソウル支局長 ヘンリー・ストークスが語る日朝関係史

ヘンリー・S・ストークス 著 藤田 裕行 訳・構成 2018.07.30 発行
ISBN 978-4-8024-0056-5 C0021 四六並製 224ページ 定価 1650円(本体 1500円)

序章より抜粋

日本大逆転

朝鮮戦争は休戦しているだけで、戦争はいまも終わっていない。
その戦時中にあって、連合国(国連)側の主力・アメリカの大統領と、戦時中の敵国である北朝鮮のトップが、「和平会談」を実現した。これは、極めて異例な出来事だ。
トランプ大統領は、アメリカの保守派からも反トランプ陣営からも、メディアからも、あらゆる批判を浴びせかけられている。
しかし、批判はそれぞれに論じるところがあるだろうが、世界史的にも異例、かつ「和平」に至るかもしれない会談を、戦時中の敵対陣営の最高司令官同士が実現させた。日本の使命は、この歴史的展開をチャンスに結びつけ、北朝鮮に拉致された日本人を奪還することにある。

拉致被害者は、日本が国家主権を発動して、奪還しなければならない。それが、独立主権国家の気概というものだろう。自国民、日本人の生命と財産を、外国政府に護ってもらっているようでは、独立しているとは見なされない。
日本は、核で相手の国を脅して従わせることはできない。だから、アメリカの支援や協力を否定しているのではない。しかし、第一義的に、拉致された被害者を奪還するのは、日本国の、日本政府の使命である。拉致被害者の奪還は、独立主権国家として、日本が成し遂げなくてはならない。
これは、安倍首相にとって、最大のチャンスとも言える。
北朝鮮が、もし自由で繁栄する国家となることを望むなら、拉致した被害者を全員日本へ帰国させるよう強く求めることだ。
北朝鮮はかつて日本国だったし、北朝鮮人民は、第二次世界大戦が終わるまでは日本国民だった。日本と朝鮮には、そうした特別な歴史的背景がある。
平和で繁栄していた朝鮮は、日本が戦争に敗れたことで米ソ冷戦に巻き込まれ、朝鮮の人々は、塗炭の苦しみを味わう運命をたどることとなった。
多くの人は信じられないだろうが、日本が統治していたときの朝鮮半島は、自由で平等で、規律正しく、繁栄していたのだ。
もう一度、北朝鮮が繁栄と豊かな未来を望むなら、非人道的な拉致を「総括」し、全ての拉致被害者を日本に帰国させるべきだ。
ずっと拉致問題は解決に至らずに、平行線が続いた。いま、北朝鮮の金正恩委員長は態度が変化している。前述したように、資本主義経済を取り入れ、国を豊かにしようと思っている。
そのために、日本ができることは多い。もし北朝鮮が拉致した日本人を全員帰した後であれば、安倍首相は北朝鮮が日本のように自由で豊かな国家の繁栄を実現できるように、金正恩委員長と交渉すべきだ。北朝鮮の発展への“ロードマップ”も、日本は描くことができる。
ただし、北朝鮮が拉致した日本人を帰さないのなら、経済的見返りを与えてはいけない。「経済」と日本を支援する各国の協力、そして国際世論を味方に付けて、日本も使命を果たすべきときが来ている。
安倍晋三は「強運」だ。運がとにかく良い。
北朝鮮の民主化を実現するという困難な仕事を果たす使命が、日本国の首相には求められている。
安倍首相よ、このチャンスを生かし、拉致被害者を全員奪還しようではないか!

そうした、いま現実に起こっている変化に、安倍首相は機敏に対応してゆくべきだ。
その一方で、「北の脅威」は常に存在していることも、しっかりと肝に銘じておくことだ。
北朝鮮が、仮に、資本主義を導入しても、自由主義陣営の一翼を成す国家となったとしても、忘れてはいけないことがある。
「北の脅威」は、消えてなくなるわけではない、ということだ。
北朝鮮の背後には、習近平の支那帝国があり、また北朝鮮の上には、これまた権力に居座るプーチン大統領のロシアが存在する。
こうした国々の核ミサイルは、仮に北朝鮮が非核化したとしても、何百発も日本に狙いを定めている。この現実は、まったく変わらない。
それは地政学的、かつ歴史的な問題でもある。
日本の背後に支那とロシアがある限り、半島は常にそうした「北の脅威」に晒され、いまでなくとも、百年後、数百年後に、それがすごく高まることも有り得ることだ。それは、二〇〇〇年前から今日までの日本の歴史を、朝鮮半島を巡る大陸の巨大帝国との「せめぎ合い」という観点で見ることによってハッキリとわかる。

ヘンリー・ストークス氏は、昭和三九(一九六四)年に来日して以来、『フィナンシャル・タイムズ』の支局を東京で立ち上げ、英国の一流紙『タイムズ』、そして『ニューヨーク・タイムズ』の東京支局長として、第一線で活躍してこられた。ストークス氏は、同時に『ニューヨーク・タイムズ』のソウル支局長として北朝鮮の金日成総書記(当時)と面会し、韓国の金大中元大統領には三〇回以上の単独取材をしている。朝鮮半島を最もよく知り、取材した西側のトップ・ジャーナリストだ。
そのストークス氏が語る朝鮮半島と日本の歴史は重層的である。時に、外国人が広い視野を持ってそうした歴史を俯瞰する「不易の目」と、時代の変化を的確に捉える「流行の目」の両方を活用して、物事を判断する必要がある。
拉致被害者の救出、そして二度とそうした不幸をもたらすことがないように、憲法改正をして国防をしっかりと固める。そしてアジアの民主化と発展に尽くす。
安倍首相には、日本国内でも世界的にも、大きな歴史的使命をしっかり果たし、大成功を収めることが期待されている。
かつて平和で、豊かで、統一されていた日本統治時代の朝鮮半島のすばらしさを、もう一度、あの半島が取り戻し、自由で民主的なアジアをつくり上げることに貢献できれば、歴史は変わる。安倍首相にも、歴史的な使命を、果たす秋が巡ってきたと言えるのではないか。
昭和から平成へと御代がわりをしたときは、時を同じくして、ベルリンの壁が崩壊し、ソ連が消滅した。
我々は、これから今上陛下のご譲位により、新たな御代を、近く迎えることになる。
東京オリンピックも、再来年には開催される。
アジアの大きな和平の時代、大和の時代を、この一連の大きな変化がもたらすであろうと、私は秘かに期待をしているのだ。
この時期に、半島問題の第一人者でもあるヘンリー・ストークス氏の論考は示唆に富む。日本国民も改めて、日本と朝鮮との関係に目を開かれる思いがするのではないだろうか。
これは、英国人記者が見た「日朝関係史」の名著である。


国際ジャーナリスト 藤田裕行


目次


序章 常に強いほうに媚びる朝鮮半島の歴史 国際ジャーナリスト 藤田裕行
 トランプは、カードを切った!
 この合意は「宣戦布告」のようなもの
 トランプは“パワーシフト”を起こした
 北朝鮮を自由主義陣営に惹きつけたトランプ流交渉術
 安倍首相に最大のチャンスが到来した!
 それでも「北の脅威」は常に存在することを忘れるな

第一章 「拉致被害者全員奪還」こそ日本の大義だ!
 拉致被害者家族の悲痛な叫び
 チャック・ダウンズ氏の『拉致報告書』
 朝鮮戦争勃発と同時に北朝鮮の拉致が始まった
 「地上の楽園」はプロパガンダだった
 世界に発信された拉致事件
 野放しのままの拉致実行犯
 北朝鮮に阿った人々の記憶
 菅直人元首相を批判した櫻井よしこ氏
 自民党の大物議員も「親北朝鮮」だった
 「拉致問題を棚上げしろ」と言った土井たか子
 日本人の拉致被害者を奪還するのは日本国の責務だ!
 アメリカと北朝鮮の特殊事情
 金日成に会った日
 ポーカー・フェイスの達人たち
 安倍首相に拉致問題の解決を期待する

第二章 歴史から紐解く「北の脅威」
 神功皇后の「三韓征伐」
 「広開土王碑文」論争が明らかにしたこと
 南朝鮮の政治と軍事を担った「任那日本府」
 三〜四世紀の日本と朝鮮の関係
 支那の強大帝国の脅威に毅然と対峙した日本
 なぜ大化の改新は起こったのか
 白村江の戦いの敗北と「防人」の配備
 支那に出現した覇権帝国・蒙古
 支那の覇権帝国の「前線」となる朝鮮半島の高麗
 支那の覇権帝国による対日砲艦外交
 ついに現実となった対馬・壱岐への侵攻
 日本軍の迎撃と「神風」の逸話
 「憲法九条」は神風となるのか?
 専守防衛とは「本土決戦」の別名
 共産勢力に「無血開城」をした韓国

第三章 なぜ日本は朝鮮を併合したのか
 日本に迫る欧米列強の脅威
 日本に迫る北の脅威
 天津条約と朝鮮半島の情勢
 日清戦争は「清から朝鮮を独立させる戦い」だった
 日清戦争の原因は朝鮮半島にあった
 三国干渉という白人列強の侵略行為
 徳富蘇峰を叩きのめした三国干渉
 日英同盟はなぜ締結されたのか
 満洲の次のロシアの狙いは朝鮮半島だった

第四章 日本統治時代の朝鮮半島は平和だった
 日本の朝鮮統治は「植民地支配」ではない
 日本の統治についてデタラメを書く韓国の国定教科書
 人種平等の理念に基づいた「皇民化」教育
 朝鮮人にハングルを教育した日本統治
 創氏改名も自由意志によるもの
 朝鮮人に朝鮮の歴史を教えた日本
 朝鮮王族に嫁いだ皇族・李方子妃殿下
 植民地支配とは「正反対」だった朝鮮統治
 日本人の税金で豊かになった朝鮮
 日本語世代の韓国人は「親日」だった

第五章 大東亜戦争における支那と満洲の真実
 満洲事変は日本の侵略戦争ではない!
 満洲で何が起きていたのか
 満洲人の四巨頭が関東軍に満洲平定を求めた
 日本の投資によって大発展した満洲国
 支那事変は日本の侵略戦争ではない!
 盧溝橋事件は共産党が仕掛けた
 いわゆる「南京大虐殺」はなかった。しかし「通州での邦人の大虐殺」はあった
 日本は北東アジアを侵略したのか?

第六章 分断された朝鮮半島
 マッカーサーによる軍事占領
 終戦を機に朝鮮を独立させようとした日本
 米・英・ソによる朝鮮南北分割処理案
 米・ソによる軍政と北の赤化
 金日成による「建国」の草創期に拉致が始まった
 韓国独立記念日のウソ
 アメリカのパペット・李承晩
 人民がまったく知らなかった臨時政府初代大統領
 言いがかりを始めた李承晩
 李承晩の韓国初代大統領への道

第七章 日本よ、真の独立主権国家となれ!
 三島由紀夫の没後四五年の憂国忌
 拉致事件は「国家主権の侵犯」である
 日本は独立主権を有する国家たれ!
 力なき正義は無能なり
 中共にも日本にも「国軍」がない
 外交は「力」が背景にあってこそ
 米朝首脳会談は「軍事圧力」で実現した
 金正恩を震え上がらせた「斬首作戦」
 金正恩のプライオリティは「体制保証」
 問題は日本である!
 拉致被害者をどうやって救出するのか?
 いまこそ安倍首相の正念場だ!