世界を見渡せば、アメリカではトランプ大統領が登場して「アメリカ・ファースト」を叫び、ヨーロッパに目を転じれば、イギリスが欧州連合(EU)を離脱し、欧州統合どころか分裂に向かって遠心力が働いている。
この結果、伝統的な大陸パワーであるドイツが政治・経済の両面で影響力を強め、ロシアがウクライナ領だったクリミア半島を併合し、シリアでやりたい放題で中東での存在感を増している。
アジアでは中国が「一帯一路」のスローガンのもと、スリランカ、パキスタンといった経済弱小国に触手を伸ばし、札びらで横っ面を叩く拡張戦略を強引に進め、南シナ海、東シナ海をわが者顔で席巻し、北朝鮮の後見役としての立ち居振る舞いを強めている。
気づけば、わが国周辺は、ロシアのプーチン大統領、中国の習近平国家主席、北朝鮮の金正恩労働党委員長といった、独裁者が支配する独裁国家に囲まれてしまった。それなのに、情けないことにわが国は、自分で自分の国を守るという当たり前のことをより可能にする憲法改正という有効な手も打てずに、いたずらに時間を浪費し続けているというのが現状だ。
中国共産党の外交・国防の大方針である韜光養晦、つまり「才能を隠して内に力を蓄える」という戦略は、今や棚から下ろした状態にあり、各国と陸で、海で、問題を起こすトラブル・メーカーとなっている。
政権基盤を固めるには、対外強硬策は不可欠であるし、個人崇拝、自らの神格化が欠かせないというのが、共産党独裁国家の悲哀なのである。それが周辺国のみならず、国際社会のいたるところで災厄をもたらしている。
習近平国家主席の母校、清華大の許章潤法学院教授が習氏について、「改革開放の成果を抹殺し、中国を恐ろしい毛沢東の時代に逆戻りさせた。共産党メディアによる神格化は極限に達している。なぜこのような知的レベルの低いことが起きたか反省が必要だ」と語っている通りだ。
トランプ大統領と金正恩労働党委員長による米朝首脳会談こそ行われた。だが、われわれ日本人が守るべき歴史と伝統、家族と地域・国家の平和と安寧を脅かす最大要因、すなわち「本丸」は、中国共産党政権であることに今一度、思いを致す必要がある。といっても、何もケンカ腰で緊張関係の中に生きよと言っているわけではない。双方が歩み寄ることで解決できる課題はたくさんある。相手がどうであれ、日本は日本のやるべきこと、備えるべきことをするだけなのだ。言うべきことを言わない友好関係、善隣関係などないのである。
日本人は戦後73年間、防衛力の整備、憲法改正、教育という、国の根幹を成す一番大切なことから目をそむけ、アメリカの核の傘に守られながら、惰眠をむさぼってきた。自衛隊や海上保安庁、警察や消防といった実力組織に守られた安全な場所から、護憲を叫んできた。
その結果が、本書で紹介した通りの惨憺たる現状なのである。地方ばかりか都会の過疎地にまで深く根を下ろし始めた中国人らは、中国という国家が世界中で紛争の種をまきちらしているのと同様、街中のあちらこちらで問題を起こすトラブル・メーカーと化し、留学生や就労者という形で日本社会に浸透する。さらには、国民の血税が4割も投入されている医療保険のタダ乗りまで許し、知ってか知らずか、それに怒りの声すら上げようとしない。
交通事故で命を落とす人は、それまで交通事故で命を落としたことがない。災害で命を落とす人は、それまで災害で命を落としたことがない。自分の命だけではない。家族を、故郷を、国家を奪われてしまえば、取り返しがつかないのである。このことを肝に銘じながら、国内外の情勢に目配りをしていかねばならないと考えている。
繰り返して言えば、外交、防衛、移民政策という国家の根幹にかかわる問題は、ひとたび間違えると取り返しがつかないのである。とりわけ移民問題は、自分たちの身の回りに直結する話であり、国民みんなが考えていかねばならない、日々の生活と命に関わる問題なのである。
論語にいわく、「鳥の将に死なんとするとき、その声は哀し。人の将に死なんとするとき、その言うや善し」。
わが国の将来は、老いも若きも、われわれの双肩にかかっている。国家百年の計を考えながら、子や孫たちに、命のバトンを渡していってほしい。