大東亜戦争
日本は「勝利の方程式」を持っていた!

実際的シミュレーションで証明する日本の必勝戦略

茂木 弘道 著 2018.11.30 発行
ISBN 978-4-8024-0071-8 C0021 四六並製 256ページ 定価 1650円(本体 1500円)

「はじめに」より抜粋

大東亜戦争 日本は「勝利の方程式」を持っていた!

いま私が「大東亜戦争に勝てる戦略を日本が持っていた」などと言うと、何をバカ言ってんだ、また例のタラレバの話かい、と思う人が多いのではないでしょうか。そして、真珠湾攻撃で石油施設を破壊しておけばよかった、だとか、ミッドウェー作戦で敵空母発見のあと、兵装転換などせずに、山口多聞第2航空戦隊長の具申どおり「直ちに発進」していたら魚雷でなくても十分戦えたし、あんな被害を受けないですんだんだとか言いたのかい、と思われる方も多いかもしれません。
確かに、真珠湾で第3次攻撃を行い、敵の石油施設を破壊していたら、ハワイのアメリカ海軍は数カ月間は機能不全、とても日本に対する攻撃などすることができなかったでしょう。ミッドウェーでも、もし山口多聞少将の具申を南雲司令官が採用して、直ちに発艦して来襲する米航空隊に立ち向かっていたら、日本の空母4隻が撃沈されるなどということは起こらなかったでしょう。
こういう例は、探せばいくらでもあります。しかし、いくらこれらのタラレバを重ねていって、すべてが日本の勝利に終わったとしても、日本の最終的勝利の可能性はほとんどない、と私は思っています。
それはそうでしょう。GNPで言えば、少なくとも当時、日本の10倍はあるアメリカです。長期戦になったら、この生産力、経済力の差が効いてきます。局部的にいくら目覚ましい戦果を挙げても、日本軍が実際に戦っていた前方決戦的なあのやり方では、とても「勝つ」などという見込みが出てくるとは思えません。
ではなぜ、冒頭で言ったような「勝てる戦略があった」などと言うのか? いい加減なことを言うな! と詰問されるでしょう。
お答えします。私は、「勝てる戦略を日本は持っていた」と言っているのです。
要は「戦略」です。経済力こそが、近代戦においては戦力の根本であり、抗戦力は基本的にはこれが決定します。しかし、考えてみてください。1国対1国の戦いでしたら、この、抗戦力が圧倒的に不利な状況を覆すというのは極めて難しいことでしょう。しかし、世界中の国がかかわる戦争となると、単純に戦力を比較しただけでは、その勝敗を判定することはできないのです。このとき、戦力を戦力たらしめるための、多国間の「輸送」の問題が、大きな要素として浮かび上がってきます。要するに、相手側の戦力が戦力になるのを防ぐ、「輸送線」「補給線」の遮断です。
結局のところ、敵の重要な輸送線=補給線の遮断を最大限に織り込んだ戦略のみが、日本が勝てる戦略ということになると考えます。そして、実は、その戦略が日本にはあったのです。それは天才戦略家の、たとえば石原莞爾がひそかに考えていたとかいうことではなく、驚くなかれ、開戦直前の昭和16年(1941年)11月15日の大本営政府連絡会議で正式に採択されていたのです。「対米英蘭蒋戦争終末促進に関する腹案」がそれです。
この「腹案」は現在の戦史では軽く見られ、そこに途方もなく巨大な戦略が秘められていたということは、すっかり忘れられていますが、私はここで、その秘められた戦略を明らかにしようとしているのです。
この戦略に沿った戦いをしていけば、日本は少なくとも負けることはなかったと言えます。本来の戦争目的を達成する形での終戦に持っていけたと言えるのです。そういうことをご説明しようというのが、本書の狙いです。
そして、実際的なシミュレーションでこれを実証します。すなわち当時の日本の戦力で可能である作戦を、この「対米英蘭蒋戦争終末促進に関する腹案」に沿った形で行ったらどうなったかを実証します。
さらに、現実的に実際に立てられていた作戦を、基本戦略から外れた、言わば外道の作戦を「排して」実行していたらどうなったのか、ということで実証していこうと思います。
その上で、ではなぜこの優れた戦略が実行されなかったのか、その理由についても、できるだけ検討してみたいと思います。それが、あの戦争を正しく振り返り、将来に生きるあの戦争の反省になると思っています。



目次


 はじめに

第1章 日本は侵略戦争をしたのか
  1929年の大恐慌とアメリカのスムート・ホーリー法
  ブロック経済の拡大→世界市場のブロック化
  アメリカによる一方的な日米通商条約の破棄
  真珠湾攻撃は騙し討ちか?
  米上院軍事外交合同委員会におけるマッカーサー証言
  宣戦布告は絶対的な義務ではない!
  7月23日には日本本土爆撃計画にサインしていた!

第2章 「対米英蘭蒋戦争終末促進に関する腹案」
  1 極東における米英蘭の根拠地を覆滅して自存自衛を確立する
  2 蒋介石政権の屈伏=汪兆銘・蒋介石連合政権の樹立
  3 独伊と提携して先ず英の屈伏を図る
  適時米海軍主力を誘致してこれを撃滅するに勉む
  独伊と提携して日本がなすべきこと
  独伊には次の施策を取らしめる
  対英措置と並行して米の戦意を喪失せしむるに勉む
  アメリカのシーレーン破壊に十分な潜水艦はあった
  対支政策と国民党政権の屈伏
  大問題の対ソ政策
  ソ連と結び、米英と対決するための国家戦略なのか?
  講和の機会、外交宣伝施策、講和の方式
  下僚の作った作文に過ぎない?
  「秋丸機関」の経済抗戦力調査
  「腹案」の戦略は「英米合作経済抗戦力調査(其一)」に基づいていた
  敵の戦略的弱点を突くことによってのみ、戦いに勝利することができる

第3章 実際的シミュレーションによる勝利の証明

  I シミュレーションの前提
  1 開戦時の艦船・航空機の戦力で日本はむしろ優勢だった
  2 戦力は根拠地から戦場への距離の2乗に反比例する
  太平洋は日本にとっての大きな武器であった
  距離の原則の証明例としてのガダルカナル戦
  石原莞爾中将のガダルカナル評
  3 連合軍の輸送大動脈・インド洋

  U 実際的なシミュレーション
  1 極東における米英蘭根拠地を覆滅して自存自衛を確立(第1段作戦)
  主要交通線を確保して、長期自給自足の態勢を整う
  仮定シミュレーション ──「腹案」を忠実に実行した場合
  劣位思考から脱却してみると、こちらのほうがはるかに優れていた!
  2 積極的措置に依り蒋政権の屈伏を促進(第2段作戦)
  第11号作戦(西亜作戦/セイロン作戦)
  敵は日本軍のインド洋攻撃を極度に恐れていた
  第5号作戦(重慶地上侵攻作戦)
  3 独伊と提携して先ず英の屈伏を図る(第2段作戦)
  アメリカのソ連支援の大動脈としてのインド洋
  4 米の継戦意志を喪失せしむるに勉む
  インド独立の可能性高まる
  「対米英蘭蒋戦争終末促進に関する腹案」により戦争目的を達成できた!
  もしも自分が参謀総長だったなら絶対負けなかったろう ──石原莞爾

第4章 なぜ勝利の戦略が実現できなかったのか
  「腹案」を本当に理解していたのか?
  山本長官は「腹案」の趣旨を理解してセイロン作戦を実行したのか?
  今後採るべき戦争指導の大綱(第2段作戦/3月7日)
  参謀本部・田中新一作戦部長の危機感
  真珠湾攻撃の成功がすべてを狂わせた
  連合艦隊と軍令部が対等になってしまった
  真珠湾攻撃の戦術的勝利と戦略的敗北
  アメリカに行ったからってアメリカのことが分かるわけではない!
  山本五十六スパイ説について
  スパイ説や陰謀論は「思考停止」の決めつけである
  山本五十六が戦略論を欠いていたことが本当の理由
  「ガダルカナルに陸軍兵力5個師団を一挙投入すること」
  補給のことを少しでも考えていたのか?
  陸軍はなぜ海軍に追随してしまったのか?
  海軍の誇大戦果発表
  誇大戦果発表の頂点 ──台湾沖航空戦
  統帥権干犯問題
  陸海軍の統帥権の分立に基本的な問題があった
  サイパンはなぜ簡単に陥落してしまったのか
  「絶対国防圏強化構想」が決定したにもかかわらず
  太平洋の島の防御作戦は陸海共同体制でのみ可能

第5章 秋丸機関と歴史の偽造
  マルクス経済学者、統制経済学者ならダメなのか
  「英米合作経済抗戦力調査」から「対英米蘭蒋戦争終末促進に関する腹案」へ
  「腹案」に沿った戦いをすれば勝てた
  杉山参謀総長が「国策に反するから全部焼却せよ」と言った!?
  ブルータス、お前もか!
  もう一人ブルータスがいた!
  「秋丸機関」のみが日本が勝てる道を示していた
  20対1は俗論におもねった付け足し
  史実が出てきても捏造を続ける人たち
  これがマスコミの捏造報道だ!
  学者は学問的良心を取り戻すべきだ!
  『経済学者たちの日米開戦:秋丸機関「幻の報告書」の謎を解く』
  有沢─秋丸が日本が勝てる戦略を打ち出したことは正しかった!

 おわりに
 参考文献



 

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