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次に何が起こるか? コロナ以後全予測

宮崎 正弘 箸 2020.06.27 発行
ISBN 978-4-8024-0099-2 C0031 四六並製 248ページ 定価 1650円(本体 1500円)

「これから」何が起こるのか

武漢ウイルス

近未来に何が起きるかは誰にも分からないが、これまでの経過と変遷を踏まえて、よもや、まさかの最悪のシナリオを考えておくべきである。いにしえより「賢者は最悪に備える」。
日本の企業利益は二〇二〇年度上半期、四六パーセントの下ブレとなる。石油業界を筆頭に商社、電気、鉄鋼、自動車および自動車部品、鉄道、バス、空運と純利益が激減した。そればかりか日産の赤字転落を皮切りに三越伊勢丹もHISも赤字計上、清水銀行は一一年ぶりの赤字。オークマの純利益は九二パーセント減、マブチ七四パーセント減、三菱ケミカル六七パーセント減、日通六五パーセント減、HSBCは五七パーセント減。ANAは一〇年ぶりに無配、Jリーグが二〇〇億円の融資を要請した。
無謀とも言える挑戦を続けてきたソフトバンクにも急ブレーキがかかった。もう少し羅列を続けると、キヤノン三〇パーセントの純利益減、現代自動車四二パーセント減、東京ガス四九パーセント減、ドコモ一六パーセント減、ファナックは六〇パーセント、デンソー七〇パーセント、京セラ一八パーセント、日東電工一四パーセントと、それぞれが純利益を減らし、三菱自動車は二六〇億円の赤字となった。
倒産、廃業が一万社を突破、まるで地獄、いや、地獄の入り口に立ったに過ぎないのか。

「最悪のシナリオ」は以下の通りである。
むろん、この最悪事態は机上のシナリオとして「万一の備えを怠るべからず」という意味で列記するもので、かならず事態がこのようにぶれるという予測ではない。
1、米国と中国の失業が実質二五パーセントを越えた。史上空前の「大恐慌」が始まる。ほとんどの国が保護貿易に傾き、地域ブロック化するので経済規模が萎縮する。日本でも失業率が高まり、同時にインフレが起こる気配が濃厚、治安が悪化する。
2、米中対決の激化、コロナ災禍以後は明らかに「米中新冷戦」となってしまった。東アジアばかりか、インド太平洋においても米中対立の激化が影響し、日本は米国に付くのか、寝返って中国に付くのか、リトマス試験紙を試されることになる。すなわち日米同盟が亀裂する危機を迎える。
3、世界の大企業、有名企業は政府支援も限界に突き当たり、倒産危機に直面する。負債処理に追われ、株式市場は六〇パーセント前後下落する計算になる。株式市場の暴落基準は「半値・八掛け・二割引」という定則があるように。
4、ボーイングやデルタ航空、ドイツではルフトハンザなど「潰すには大きすぎる」ので、場合によっては一時国有化というアメリカ資本主義に例のない非常手段も講じられる。げんにアリタリア航空はイタリア政府が国有化した。現段階ではボーイングの社債を中央銀行が買い取るという非常手段が講じられており、実質的に国有化に近い。
5、自社株買い、株主配当重視などといった近視眼的経営の抜本的改変が行われ、四半期ごとの決算が見直される。会計制度の変革が世界的に起こるだろう。
6、ドル基軸という通貨体制への疑念が深まり、為替相場が乱高下の挙げ句に市場は一時停止され、通貨戦争が大規模になると世界の決済システムが中断に追い込まれる。
7、金、プラチナなど商品市場が暴騰をつづける一方で、穀物などのコモディティ市場は乱高下を繰り返す。レアメタル取引はスマホ販売減により低迷するが、産地のコロナ感染で供給が先細りになるので。とくに「永遠の通貨」=ゴールドの市場動向には注意が必要である。
8、中国では食糧が不足し、店舗が襲撃され、暴動が多発する。すでに中国各地で賃金不払いに抗議するデモ、集会が頻発しているが、このままでは飢饉が発生し、そのうえ蝗害が追い打ちをかける。軍隊が治安維持で出動すると略奪の先頭にたって匪賊化する。
9、目の前に迫った蝗害の不安。サバクトビバッタがパキスタンから新疆ウイグル自治区に侵入してくると青海省、甘粛省から雲南省までの広範な範囲に飛ぶ。この地域では中国全体の穀物(小麦、トウモロコシ等)の一一パーセント、大豆の一五パーセントを生産する。トウモロコシは豚や牛の餌で、養豚業も牧畜業も直撃される。中国は大豆の八〇パーセントを輸入に依存している。トウモロコシは豚・牛の餌のほかに工業用のエタノールに転用している。中国の食糧安全保障が意外に脆弱なことが明らかとなる。
10、蝗害が南のインドからバングラディシュ、ミャンマーを越えて広西チワン自治区、広東省、湖南省から北は河南省まで拡大すると、この地域は穀物が二四パーセント、大豆一〇パーセントの穀倉地帯であるがゆえ被害は甚大になる。さらに山東省から福建省の沿岸部にまで蝗が飛翔し、生命力を維持すると穀物の二五パーセント、大豆の一三パーセントが被害を受ける。サバクトビバッタは全長五センチしかないが、一日百キロを飛翔する。
11、東京五輪は二〇二一年も開催されない可能性がある。ニューヨークタイムズが東京五輪を中止せよと論陣を張り、一年後に延期となった。ドバイの万博も一年延期された。東京五輪の責任者、森喜朗(元総理)は「五輪が戦争時期に中止されたことはあった。いまは戦時である」となんだか来年の五輪も中止するような示唆的発言を繰り出した。
12、動静が伝わらない金正恩。北朝鮮の急変、あるいは崩壊により日本への難民が大量に発生する。百万の難民が押し寄せたら、日本はどうするのか。対策がない。まして難民のなかにはコロナ感染者が多数含まれる危険性がある。
13、産油国でデフォルトが発生し、中東の金融システムが機能しなくなる。これを切っ掛けに世界の資源国、非資源国を問わず、政変に発展する。
14、大規模な地域戦争が勃発し、在日米軍は日本防衛を諦めて撤退する。日米安保条約は事実上、空白状態になる。日本国内では中国の第五列が策動を始める。

概して三つの潮流が明らかである。
第一にグローバリズムの後退、第二にナショナリズムの復権。そして第三に世界のサプライチェーンが改変される。
二月以降、外国との往来がない。つまり日本は鎖国状態であり、むしろこのチャンスを活かす傾向が生まれるだろう。
はたして何か劇的に変わるか? そして何が変わらないのか。日本はどのような大転換を迫られるのかをこの小冊で追求していきたい。

目次


プロローグ 大恐慌が再来した
 短期的には消費、流通に変化
 「これから」何が起こるのか

第一章 百年で最悪の不況
 短期的変化は一過性である
 ワクチン、特効薬は二〇二一年以降
 最大の意識変化は人生観、死生観の変化だ
 ペスト、そしてルネッサンス
 感染の元凶地帯を爆破せよ
 戦争という最悪中、最悪のシナリオ
 人工の生物兵器だったのか
 未知で正体不明だから怖かったのだ
 空の旅客復活は三年かかるだろう
 都市封鎖、そしてこころの封鎖

第二章 中国、真っ逆さまの暗転
 世界が中国と敵対を始めた
 中小企業の倒産が「ラッシュ・アワー」
 武漢の封鎖解除、六万余人が脱出した
 実際に華僑とビジネスをしてみた
 新卒八四七万人の半分に就職先がない
 雄安新都市は「習近平の阿房宮」
 アジアの華僑社会も苦戦
 食糧買いだめの中国、食糧禁輸のアジア
 ウイグルの強制収容所で「再教育」を「卒業」したウイグル人は?
 広州で起きた黒人差別が外交問題に発展する
 湖北省公務員が湖北省政府を相手取って訴訟を起こした

第三章 アメリカのV字型回復はあるか
 「米国GDPはマイナス四〇パーセント」と予算局予測の衝撃
 中国投資から手を引け
 「中国製造二〇二五」を頓挫させよ
 最悪の被害が資本主義の象徴ニューヨークになろうとは!
 大乱世を生き抜く
 GAFAに地殻変動。ダントツの強みはアマゾンだった
 中国に対して損害賠償を起こせ
 今こそ『脱亜論』
 プーチンも激怒した
 イスラエルのコロナ対応

第四章 「失われた二〇年」が自動延長?
 初動の遅れ、次は「新しい生活様式」
 孤独なる群衆
 6G開発で日米が連携へ
 非常事態宣言は日本国憲法になかった
 韓国の危機、アジア通貨危機二・〇
 香港の若者達の呻吟を聞け
 アジア全域にアンチチャイナの風

第五章 全体主義、末法思想と「ええじゃないか」
 全体主義が頭をもたげている
 ええじゃないか、お伊勢詣り、富士講
 待っているのは戦争かも知れない
 米国の疲労、油断を狙え
 難民という難問
 少子高齢化社会に必要なのは「看取り」
 輪廻転生
 ドストエフスキーの戦争論
 反近代の発想

第六章 ウイルスと「共存」の時代
 「共存」時代の幕開け
 消費マインドは移り気でもあり、傾向でもある
 トフラー『第三の波』の予測
 都市文明のアキレス腱
 中国歴代王朝も疫病で滅びた
 ところが日本にはパンダハガーが暗躍
 戦後の「神話」を捨てよう
 破滅の曠野から曙光が射した

エピローグ 「デジタル人民元」という「通貨ウイルス」
 敵国の通貨を台無しにせよ
 中国は米国債を売却するゾと脅す?