20世紀(1900年代)のはじめ、氷山のうかぶ、地球のいちばん南にある南極は、探検の舞台でした。
人類が足を踏み入れたことのないこの南極に、アムンゼン、スコット、そして日本の白瀬矗といった人たちが、きびしい自然とたたかいながら、探検を試みました。その後、世界の国々が力をあわせて、南極の秘密を調べようという動きがおこり、日本も南極観測の仕事に参加しました。
このとき、重い荷物などを運ぶために、ソリを引いて南極の氷原を走り、活躍したのがカラフト犬たちでした。
犬たちは、観測隊の人たちにかわいがられ、雪あらしがふきあれる氷の大地で、足のうらから血をしたたらせながら、ソリを引いて、いっしょうけんめいに働きました。きびしい自然のなかで、人間と犬は、ひとつになって、心をかよわせたのです。
そして、犬たちの助けがなければ、この南極観測の仕事は、なしえなかったといっていいでしょう。
ところが、この15頭の犬たちは、南極におきざりにされました。それも、クサリにつながれたまま……。
これにはいろいろな事情があったのですが、結局、生きたまま、犬たちを見捨てることになってしまったのです。
そのとき、日本中の人が驚き、悲しみ、そして、いきどおりの気持ちで胸をえぐられました。マイナス40度ちかくにもなる寒さ、食べものもない南極では、15頭の犬たちは、すぐにも死んでしまうと思ったからです。
それから1年――、なんと、奇跡はおきたのです。
※この作品は2011年9月当社より刊行された『ハンカチぶんこ南極犬物語』をリサイズ編集したものです。