僕は昭和二十年一月生まれなので、当然国民学校には通っていませんし、国民学校で使用されたこの教科書で勉強したわけではありません。しかし、この教科書に書かれていることは、子供のころから習っていたし、今も自分の心の支えになっています。だからこの『復刻版 高等科修身 男子用』の解説を依頼されたときに、「ああ、これは僕が家庭教師から習ったことと同じ内容だ」と真っ先に思ったのです。
ある日のこと、いつものように祖母と母に「今日は小学校でどんなことを習ったの?」と聞かれたので、「天皇はこんな悪いことをした、日本は他国を侵略した悪い国なので、我々は償いをしなければならないといったことをいろいろ教わった」と言ったところ、二人とも血相を変え、「それはとんでもないことだ」と言うのです。それで、「その先生はどんな人なの?」と聞くので、「シベリアに抑留されていたけれど、早く解放されて帰ってきた先生で、師範学校在学中に学徒動員された人だよ」と答えると、祖母と母はこう言いました。
「その先生は共産主義者です。その先生の言っていることは全部嘘だから、もういっぺん正しいことを教え直します!」
そこからの祖母と母の動きは早かったです。まず、親戚に師範学校をいい成績で卒業したベテランの教師がいたので、その人を家庭教師につけてくれました。母は、それではまだ足りないからと言って、母の恩師で地元では有名な教育者の方も家庭教師につけてくれたのです。その二人から習った内容が、本書『復刻版 高等科修身 男子用』をはじめとする国民学校の授業内容だったのです。
この教科書をはじめとする戦前戦中の教科書と、今の日本の教科書を世界中の国の人に見せてみて、どちらが筋が通っているか聞いてみるとわかります。例えば、今のウクライナの人にどちらの教科書が正しいか聞けば、昔の教科書の方が絶対正しいと言うと思います。「武器を取って戦うことを放棄する」とか、「みんなの善意で守ってもらうことを期待する」とか、現在戦禍にあるウクライナに限らず、どの国の人もまともなことだとは思わないのではないでしょうか。
その一方で、親孝行や先祖を敬うというようなことを、今の日本の教科書は全く無視しています。今の子供たちは「忠」も「孝」も知りません。そういう点でもこの『復刻版 高等科修身 男子用』の方がグローバルスタンダードだと思います。
もちろん時代的なものもあるので多少アナクロになっている箇所はありますが、この教科書の基本的な精神はどこの国の人でも理解できるものです。
戦後教育ですっかりやられてしまったせいで多くの国民が洗脳されています。日本は戦後教育によってうまく骨抜きにされて、今、立ち回りが世界一下手な国になっています。だから、教育が重要なんです。