『ペットがあなたを選んだ理由』は、河川敷近くの動物保護活動現場での実体験を元に、私たちがいつか直面する愛するペットとの死をテーマに書いたものです。この本は発売当初から私の手を離れ、広く多くの方に愛され、思いがけずロングセラーになった幸せな本です。
この度は、装い新たに新装版として刊行していただけることになりました。
この本を初めに執筆していたときから十年余り経ちますが、大急ぎで変容していく世の中において、うちの子と私たちの関係性は驚くほど変わっていません。私たちの保護活動やうちの子に対するお世話は、病気に一喜一憂したり、おしっこを拭いたり、いいうんちに喜び、安らかな寝顔に愛おしさを感じる。相変わらずそんなふうに泥臭く、非合理的でアナログな世界のままです。
犬猫たちとのコミュニケーションツールは未だ翻訳機ではなく、昔ながらの観察眼とこの子を理解したいという思いの模索。生前のあの子に望むこと、伝えたい言葉、あの子としたい約束事や虹の橋を渡ってしまったあの子に私たちが望むこと。それは「また会いたい!」の思いだったり、「今も変わらず愛してる!」という叫びだったり、泣きながら伝える「大好きだよ!」という言葉だったり。
そんなうちの子に対する私たちの思いは時空を凌駕し、“不変”なような気がします。それは、愛というものが不変であることの証明に他なりません。私たちの思いは不変なのですが、あの子の死に対する解釈は、ひと昔前から少しずつ進化しているようにも感じています。
死は別れではないかもしれない。うちの子との出会いには何か意味があるように思える。なぜ、私のところに来てくれたんだろう? 「死」を忌み嫌い、遠ざけ、畏れているばかりの世界から、私たちは「死に光と再生を」求め始めた時代に突入したような気がします。
「どうしてもこの子との縁を死で分かちたくない!」そんな情念をお持ちの方や、あなたの最愛の子との別れに直面したばかりの方々に、そんなメッセージを届けられる本でありますように。
本書を執筆時(平成24年)には存命だった愛猫はんにゃも、天にお返ししました。
合掌 令和5年 庚申(8)月 森林の施設にて 塩田妙玄