日本の最大の敵は日本人自身の自虐史観だ。戦後、米国は厳しい言論統制を行って「日本の軍国主義者が侵略戦争を行ったので、米国が正義の鉄槌を下して悪の日本を懲らしめた」という虚構を広めた。日本人が誇りを取り戻すためには、こうした虚構を打破して、そこから脱却しなければならない。
筆者は、機会ある毎に次の通りの説明をしてきた。
「ルーズベルト大統領は、ドイツのナチスを抑え込むためには米国が立ち上がらなければならないと考えていた。しかし米国の八十五パーセントは不干渉主義だったし、ルーズベルト自身も戦争をしないことを公約して大統領になったので、世論を変える必要があった。
そこで、ルーズベルトは当時、有色人種のくせに世界に台頭して目障りだった日本をして米国に戦争を仕掛けさせることを考えた。そして米国議会にも国民にも内緒で実質的な宣戦布告(ハーバート・フーバー元大統領の表現)に等しい無理難題を押し付けて、真珠湾攻撃に立ち上がらせた。そして日本の卑怯な不意打ちを演出した。米国民は大いに憤激して、国内世論は一挙に戦争容認に傾いた。これによりルーズベルトは首尾よく戦争を開始することができた。日本は、こうした経緯の犠牲になったものである」
しかし聴衆の反応には「青柳さんの話は良くある陰謀論の類で、面白いけれども信じ難い」というものが多かった。しかし、これでは事実の直視を拒否する姿勢だ。
平成二十八年十二月二十七日、安倍首相はオバマ大統領と共に真珠湾のアリゾナ記念館を訪れて犠牲者を慰霊した。オバマは「日米両国民の和解と協調の力を示す歴史的行為である」と述べた。朝日新聞は日本軍の攻撃で負傷した(元)米兵士が「日本兵も命令に従っただけ」と寛容な姿勢を見せたと報じた。日本嫌いのニューヨーク・タイムズは、「安倍首相は哀悼の意を表明したが、謝罪はしなかった」と報じた。しかし両国のどのマスコミも、この事件の真の元凶は、ルーズベルト大統領であることには触れていない。そこで本書では、当時の共和党の党首で正義感にあふれたハミルトン・フィッシュ(Hamilton Fish)が真相を知るに及んで憤慨し、米国民に読ませるために著した『Tragic Deception(悲劇的欺瞞)』(一九八三年)を紹介することを通じて、歴史の真相に別の角度から迫ろうとするものである。
ただし、この著作は現在の国際政治学のレベルからいうと疑問な点が多々あり、かつ幾つかの点で筆者はフィッシュとは意見を異にする。本書は、そのような個所にコメントを付して、筆者の国際政治論をフィッシュの著作を手掛かりにして立体的に展開したものである。
※本書は平成29年に弊社より刊行された『ルーズベルトは米国民を裏切り日本を戦争に引きずり込んだ』を再編集し、普及版としたものです。