日本の子どもたちが、自分の国に誇りを持って生きていけるように、私たち大人は、親は、一人ひとりが、もっとできることがあるはずだ。そんな思いを込めてこの本を書きました。
どこの国でも、子どもは親にとって何よりも大切な宝です。また、親は誰でも、子どもがすくすくと元気に成長し、自分の夢を実現して幸せに暮らしてほしい、できることなら国のために役立てるような人になってほしいと願っています。
ところが、日本には心配なことがたくさんあります。東北の大地震で大きな被害を受けた地域のことや、福島の原子力発電所の放射能のこと、国の巨額な借金、そして子どもたち自身に直接関係のあるいじめのことなど、難しい問題がたくさんです。
どれも簡単に解決できることではありません。しかし大人たちは、子どもたちの世代に先送りしないで済むように、問題に真剣に向き合い、考え、行動しなければならないと思います。
領土問題も、その一つです。
今、日本は、中国、韓国、ロシアと、領土・領海の問題があり、とても難しい状況にあります。特に中国、韓国とは、お互いに話し合うこともできないほど関係が悪くなり、これから先しばらくはどうにもならないと言う専門家も少なくありません。
でも、「領土・領海のことは難しい」と言って放っておくことはできません。国と国の関係は、将来の子どもたちに深くかかわってきますし、何よりも今、日本の子どもたちが中国や韓国の日本に対する発言や行動を見て「日本ってどんな国なの? そんなに日本はひどい国なの?」と大きな不安、疑問を持っています。中には、日本人であることに負い目のようなものを感じている子もいるようです。
そんな子どもたちを、親は、大人はきちんと受け止め、説明してあげる責任があると思います。ただ、領土・領海の問題は、簡単に言えば「考え方の違う国どおし」の土地(海域)の取り合いです。そのため、流される情報はさまざまで、残念ながらウソが入り混じっている可能性もあります。そんな中で、親は子どもたちに、どのようなことを教えてあげればいいのでしょうか。
私が考えたのは、「教えてあげる」のではなく、「子どもと一緒に考える」ことです。簡単に一つの意見を取り入れるのではなく、できるだけたくさんの情報を調べ、多くの人の意見に耳を傾け、本当のことは何なのかを知ろうとする姿勢こそが大事ではないかと思います。
この本も、日本の外務省の考え方を中心にし、新聞や雑誌、さまざまな専門家の書籍、インターネットなど、たくさんの情報を参考にまとめました。逆に、誰か特定の専門家の意見を重視して取り入れたようなことはありませんし、まして一つの意見を押し付けるようなものではありません。
言い換えると、日本に住んでいる普通の人が、あまり苦労せずに集められる程度の情報を元に、子どもたちが領土・領海を考えるときの参考にしてほしいと願ってまとめたものです。ぜひ、家族みなさんで読んでいただき、自分はどう考えるか話し合っていただければと思います。
また、できれば中国、韓国、ロシアの子どもたちや親にも読んでいただき、日本の子ども、親と意見を交換するきっかけになり、それが国どおしのいい関係につながっていけばいい……。子どもたちの豊かな可能性を思うとき、こんな私の考えも実現するのではないかと思っています。
本書の紹介動画です