本書は、大東亜戦争末期、絶望的な戦況の中で行われた「特攻」という体当たり攻撃に志願し、無念にもそれぞれの理由で生き残ることになった8人の元特攻隊員の証言集『特攻 最後の証言』(アスペクト刊・現在文春文庫収録)の続編です。
今回のインタビューは2009年6月28日から2010年6月5日にかけて、11人の方々に証言をお願いしました。後世に特攻の真実を伝えるためのアーカイブ制作へ向けて、様々な分野で活躍中の有志たちによる、【特攻ライブラリー取材班】を新たに結成、前著でインタビューをお願いした方も3人含まれています。今回は優れた戦争ドキュメンタリー映画の監督で知られる長尾栄治氏がインタビュアーとして取材班に参加し、新たな切り口での証言となりました。
インタビューは、特攻に使用された11種の兵器別に行ないました。「四式重爆撃機『飛龍』」「百式重爆撃機『呑龍』」「マルレ(四式肉迫攻撃艇)」「九七式艦上攻撃機」「九七式戦闘機」「伏龍」「零式艦上戦闘機」「九六式陸上攻撃機」「一式陸上攻撃機」「四式戦闘機『疾風』」「九三式中間練習機」です。
当時これらの兵器に搭乗出来たのは、志あれば誰でもというわけではありませんでした。幾多の選抜試験や訓練によって選び抜かれた10代の兵士たちでした。努力によって高められた知性を持ち、磨き上げられた肉体がなければ、当時巨額の国費を投じ日本最高の技術を注ぎ込んだ、これらの兵器を操縦することは出来なかったのです。
インタビュー対象となったのは、80歳を超える御高齢の旧軍人の方ばかりでした。それにも関わらず年齢を感じさせない強い意志を感じたのは、かつて磨き上げられた肉体と高められた知性のせいかもしれません。外見的に肉体は老いたとしても、その精神に老いは全く感じませんでした。
特攻ライブラリー取材班は、戦争マニアでも特攻マニアでもありません。「特攻」という、国あるいは愛する人々を守るために己の命を捧げる行為に対して、言葉にならない何かを感じ、当時そこで一体なにが起きていたのかを知りたい一心で取材に臨みました。インタビューは毎回驚きの連続でした。事前に資料を読むのと実際に話を聞くのとでは大違いであることを知りました。
インタビュー内容は証言者による度重なるチェックのうえ、出来るだけ手を加えぬようにしましたが、今回は取材を引き受けて下さった方々の人数も多く、長時間にわたる内容だったため、全てを書籍に収録するには限界があり、割愛した部分や後日の聞き取り調査のなかで追加した証言もあります。
もちろん決してこれらの証言が、特攻のすべてを語っているわけではありません。しかし、取材した元特攻隊員の真実を直球で伝えるには、取材する側の結論ありきの思い入れや過剰な表現を避けた、この方法しかないと確信しています。
『特攻 最後のインタビュー』制作委員会