「後ラク子育て」というタイトルを見て興味を持ってくださったあなたは、
「今頑張れば、後でラクできるっていうこと?」
とちょっと期待されたかもしれません。
私は子育ての中でいつも「今頑張れば、後でラク」と思いながら子育てをしてきました。そう思いながら三人のわが子たちを、ただ一生懸命に育ててきました。わが子たちが大学生、高校生、中学生になった今、振り返ってみると、
「あの時頑張っていて本当によかった」
としみじみ思います。
私の友人、知人、ご近所さん、子どものお友だちのお母さんなど、わが子をご存じの方から口々に、次のようなことを聞かれるようになりました。
「どうやってこんなに前向きな子どもを育てたのですか?」
「どう育てたらこんなに自立した子どもになるの?」
「勉強しているふうには見えないのに賢いのはなぜ?」
その方々は、小学生・中学生になったわが子を見てそうおっしゃったわけで、きっとわが子たちがまだ赤ちゃんの時から私が、
「後でラク、後でラク」
と唱えながら敢えて手のかかる子育てをしていたことをご存じありません。きっと私が魔法でも使っているのではないかと思っていらっしゃるかもしれません(笑)
本書では、「子育ての軸」をしっかりとしたものにするためのアレコレをお伝えしようと思います。決して子育てのノウハウではありません。「子育ての軸」さえしっかりすれば、子育てのノウハウは一人一人違っていてもいいのです! だって、お母さんだっていろいろ、お子さんだっていろいろなのですから。
あなたのお子さんが「自立して夢を叶える」子どもになるためには、次の四つの力を身につけさせてあげることが重要です。
★先考力(せんこうりょく)……先を読む力
★広考力(こうこうりょく)……物事を広くとらえる力
★深考力(しんこうりょく)……物事を深く考える力
★体脳力(たいのうりょく)……丈夫な体と賢い脳
これから本書のページの中で、これらの言葉の本当の意味と、具体的にどんな時にどうやって身に付けさせるのかを書き記していきます。どうぞ、あなたのお子さんと、お子さんとの生活を思い浮かべながら読み進めてください。全部が全部あなたの子育てにぴったり役立つことはないかもしれません。でも、一つでもあなたの子育てのヒントになることがあれば、本当にうれしく思います。
そして、母学を学んで、後ラク子育てをするお母さんが増えて、不安や恐れを感じることなくのびのびと成長するお子さんが日本中にあふれる未来を楽しみに本書を書き進めたいと思います。
プロローグ――後ラク子育てとは?
第一章★先考力
【概要】
転ばぬ先の杖―― 先回りして支えるのはいいの?
キッチン子育て―― 一を聞いて十を知る?
想像力の芽―― お手本通りが大事?
最初が肝心―― どうやって黙らせる?
個性を奪わない―― 恥ずかしいと思っているのは誰?
心のご褒美―― 目標は誰が決めるの?
絵本の世界の先――質問せず感想は求めない!
判断は子に任せる―― 傘を持って行かない?
自力で勝ち取る―― お手伝いから仕事へシフト
続・自力で勝ち取る―― お金教育をタブー視しない
第二章★広考力
【概要】
教科書は無限に―― ティッシュの箱
理不尽の練習―― 保育園の園庭からなかなか帰りたがらない子
自由な発想を守る―― 親の先入観を変えよう
台所は遊び場教室―― お手伝いは早い時期から
おもちゃ選び―― どんな基準が大切?
失敗から学ぶ―― 叱る判断基準は何?
主張と折り合い―― レストランのメニュー
第三章★深考力
【概要】
親もそうだった―― 子どもは水たまりが大好き!
教えて教えて攻撃―― 教えないイジワルな母になる
恐怖かチャンスか―― コップがテーブルから落ちた!
生き物を飼う―― ザリガニ? アリ? ヘビ!
深取り学習のススメ―― 先取り学習する?
宿題のやり方―― 子どもに決めさせる?
勉強がんばれ!―― 言葉がけで好きにも嫌いにも
何のために勉強するの?―― 算数を学ぶ理由
第四章★体脳力
【概要】
驚きの裸育児―― 限界を広げる体づくり
薄着の効用―― 子どもの快適さを尊重する!
不都合な遊び―― 親目線から子の成長目線へ
朝マラソンのススメ―― 継続力とコミュニケーション
仮想現実の功罪―― スマホは子どものおもちゃ?
テレビよりボードゲーム―― 頭を鍛えるのに最適
発達段階と筆記具―― お絵かきはクレヨンで!
あえて不便さを与える―― 鉛筆の削り方
奥深い積み木―― 物事を組み立てる力を養う
第五章★母学のススメ
【概要】
@後ラク子育て
A人生は楽しい!
B生活の生産と消費
C教えない子育て
Dトコトン!
E氷山の一角
F子育ての軸
おわりに
私は約四年前に『母学アカデミー』を立ち上げ、子育て中のお母さんに母学をお伝えしてきました。継続して母学アカデミーで学んでくださっている方、講演会やセミナーで学んだ方、ブログやメルマガで学んでいる方、千人以上のお母さんたちが母学に共感して子育てを学ばれています。
たくさんのお母さんたちが母学を学ぶことで、
「自分の子育ての軸が出来ました」
「子どもが変わりました」
「自分の人生を楽しめるようになりました」
「他の人から何を言われてもブレなくなりました」
と報告をいただいています。母学の輪が全国に広がっていくにつれ反響も大きくなりつつあります。この本を手に取っていただいたあなたともきっとご縁があったのだと思います。ぜひこの本で母学を学び、子育てに生かしていただきたいと思います。
子どもに魔法をかけていい子にすることはできません。でも、お母さんが子育てを学ぶことで、子育てはラクに楽しくなるのです。そして子どもは夢を叶えるために前向きに歩きだすのです。人生は一度きり、子育ても一度きりのチャンスです。お子さんが成長して社会に出た時に、
「ラクに楽しく子育てが出来て幸せだった」
と思えるよう、今日もお子さんと正面から向き合いましょう。
お母さんが子育てのタイヘンさに苦しんでいる時、周りの人から、
「今が一番いい時よ」
と言われたことがあるでしょう。私もわが子たちが幼い時によく言われました。
「こんなにタイヘンなのに『いい時』だなんて言わないで(怒)」
と内心思っていましたが、子どもの手が離れつつある今、それは真実だとしみじみ感じます。
最後に、この本を執筆するにあたって協力してくれた家族に感謝を伝えたいと思います。とりわけこの本の子育てモデルになってくれた愛するわが子たちに、
「子育てを楽しませてくれてありがとう」
とありったけの愛情を込めて伝えたいです。