日本は戦後、「東京裁判史観」なるものによって多大な被害を受けてきた。
そして、占領軍が勝手に作った平和憲法なるものを今日も堅持し、五〇万人以上の民間人が命を落とした無差別都市空襲や二発の原爆は、私たち日本人がアジア各地で行った蛮行や、アメリカへの宣戦布告なき奇襲、そして連合軍捕虜たちへの虐待の結果もたらされた「当然の帰結」であり、我々こそがその罪を未来永劫、背負っていかねばならないのだとする「プロパガンダ」が蔓延した。
教育界はそれを子供たちに躍起になって刷り込み、メディアもその発信に大きく加担した。
その一方で、今日でもなお、アメリカや韓国、中国を発信源とする対日戦争プロパガンダはさかんだ。いや、見方によってはどんどんと激しくなっていると言えるかもしれない。
人気ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーが監督を務める『アンブロークン』という映画が全米で公開される。
この映画は同名の書籍を基にして作られており、その中には、相変わらずの戦時プロパガンダのオンパレードと、相手が日本人であれば何を言っても許されるという態度で書かれたに違いない誇張が、随所に見られる。
本書では、映画の原作本に登場するそんな日本軍人らの描かれ方が、いかに一方的かつ個人的なものであるかを強調し、かつ、無謬とは言わずとも、連合軍が日本軍に比べてはるかに人間的であったとする「神話」に挑むため、それらの国々の軍隊が行った数々の蛮行を記述している。
しかしこれは、あまりにバランスを欠いていたこれまでの「常識」を覆すための作業であり、決して、返す刀で日本軍は無謬であり、一〇〇パーセント正義であった、とするものではない。
事実はただ一つ、やったことはやったし、やらなかったことはやらなかった、というだけの話なのだ。そして、その観点から眺めても、日本の罪悪はあまりに誇張され過ぎているし(しかも、日本人自身にもよって)、また連合軍のそれはあまりに巧みに隠蔽され、逆に美化され過ぎているのである。
日本人は多くを反省しなければならない。
しかしその反省とは、東京裁判史観に基づいて一方的に指摘される「罪」などではない。
あの戦争で確かに多くの失敗をしたとされる日本人が、その一方でいったい何を考え、またどんな「正義」を信じていたのかという考察さえせず、また戦勝国のプロパガンダに
ただ乗りすることで、次の若い世代にまで自己反省と外国へのへつらいや謝罪を強要してきた、戦後日本社会の在り方についてである。
本書によって、少しでも多くの人が、今日まで日本社会を覆ってきた様々なプロパガンダの嘘に目覚め、品位と誇りある日本を取り戻すための活力を得ることができるなら、これに勝る喜びはない。
内容紹介動画
はじめに
第一章 全米ベストセラー『アンブロークン』の何が問題なのか
米アマゾン・ドットコムに寄せられた一万件以上の「絶賛」
『アンブロークン』の内容を一蹴した日本海軍の元爆撃機搭乗員
生物化学兵器の「人体実験」から生還?
日本の潜水艦乗組員に袋だたきにされ、収容所で顔面を二二〇発殴打される
捕虜収容所における日本人看守の虐待
日本軍上層部の意思ではなかった捕虜虐待
映画化で拡散する、日本に対する負のイメージ
第二章 誰がプロパガンダを仕掛けるのか
ハリウッド資本による反日プロパガンダ
アメリカにお墨付きをもらって復活した「武士道」
『旧約武士道』と『新約武士道』
絶妙なタイミングで公開された『ラストサムライ』
「意訳」で日本人を煙に巻き、アメリカに媚びる字幕翻訳者の罪
プロパガンダに加担するハリウッド俳優
世論を操作するための大がかりなプロパガンダ
「リメンバー◯◯」で戦争を煽る常套手段
統治の原則は「分断」である
アウン・サン・スーチー女史の「正体」
ノーベル平和賞マララさんと、世界最大の広告代理店
イスラム初の女性国家元首ブット女史の末路
「陰謀論」という魔法の言葉
第三章 世界で日本を売る人々
悪意ある翻訳の意味するもの
海外で日本の悪口を言いふらす日本人
英語論文という「卑怯」な手口
戦場売春婦は日本の専売特許ではない
今度は「日本軍=人肉食」というイメージを流布
どうして彼らは「人の肉」を食ったのか
第四章 捕虜虐待をめぐる問題
「日本人」という凶暴な猿を殺せ
捕虜収容所で起こった「文明の衝突」
日本国内の捕虜収容所における「食事」
捕虜収容所の職員らとの交流
連合軍捕虜たちに対する日本人の態度
連合軍による捕虜収容所関係者への仕打ち
日本人戦犯に対する凄まじい虐待
第五章 連合軍による戦争犯罪
原爆と空襲──連合軍の無差別殺戮は「無罪」なのか
連合軍による強姦、捕虜殺害、死体損壊
凄まじかったヨーロッパ戦線における捕虜の取り扱い
アメリカもまた大量のドイツ人捕虜を死に至らしめていた
捕虜への拷問すらプロパガンダ映画で正当化
第六章 今こそ世界に「正しい」反論を
東南アジア各地で日本軍が戦ったのは現地人ではない
世界の大部分は親日国である
痛感した台湾の「親日」
イラン駐在の日本人を救出したトルコ航空
欧米世界では、黙っていることは、相手が正しいと認めること
日本のことを知らない日本人
本物の自信とは、声高に自らを誇ることではない
欧米人に弱い日本人は彼らに舐められている
第七章 品位と誇りある日本を作るために
人種、国籍、宗教を超えた人間愛
アメリカの黒人人権運動を動かした日本人
ほめるときは「ドイツ」、けなすときは「ナチス」
無知と嘘を乗り越える
おわりに
マレーシアのマハティール首相は、一九九二年一〇月一四日に開かれた「欧州・東アジア経済フォーラム」においてこう語った。
日本の存在しない世界を想像してみたらよい。
もし日本なかりせば、ヨーロッパとアメリカが世界の工業国を支配していただろう。
欧米が基準と価格を決め、欧米だけにしか作れない製品を買うために、世界中の国はその価格を押しつけられていただろう。
もし日本なかりせば、世界は全く違う様相を呈していただろう。
富める北側はますます富み、貧しい南側はますます貧しくなっていたと言っても過言ではない。
北側のヨーロッパは、永遠に世界を支配したことだろう。
かつての日本がやったことを最も忘却しているのは、我々自身であるに違いない。今日もなお勢いよく流される、世代間や社会の分断を奨励するプロパガンダのせいで、私たちは、自らの祖父たちが行った多くのことからできるだけ目を逸らそうとしてきたし、あの時代を生きた「昔気質の男たち」もまた、自らの築き上げた成果について、沈黙を守り続けてきた。彼らは、敗北を喫した身で自らがなし得た何かを語ることを、潔しとしなかったのだ。
そんな我々日本人が美徳とする「沈黙」と「潔さ」は、国益というパイの争奪戦である国際関係においては、時に致命傷となることがある。それはそうだろう。敵は、次から次へと言葉を発し、様々な視覚的、聴覚的イメージ操作で攻めてくるのである。なんの根拠もない慰安婦強制連行などがよい例だ。
しかし、大概の日本人はこれらのプロパガンダに関して沈黙を守っていた。ただ単に何も知らないか、反論する勇気がないか、またはその場の雰囲気を壊したくないからか、あるいはそのすべてが理由だ。そんな日本人の特性を、一部の外国人はよく研究している。そして対日政策決定において、そこを弱点として突いてくるわけだ。その結果、我々はますます卑屈になり、国益はどんどんと失われていく。しかし、それは次の世代の誇りをも汚していることにならないだろうか。
なぜ彼らはプロパガンダを流し続けるのか。それは、彼ら自身が「日本の強さ」を知り尽くしているからにほかならない。もし私たちが真に弱小な存在に過ぎなければ、彼らはとうの昔にメシア・コンプレックス的な憐憫の情を向けるか、あるいはもっと違う形での政治支配を完了していたことであろう。
言うべきは、はっきりと主張しよう。黙っていてはいけない。しかしその一方で、自らを知り、相手を知り、常に他者への敬意をもって、日本人らしい立ち居振る舞いをも忘れてはならない。一人ひとりがこのような生き方を貫いて初めて、私たちは品位と誇りある日本という国を作ることができるのだと思う。そしてそれだけが、卑劣な外国からのプロパガンダに対抗し得る最高の方策なのだ。