70年前―。
朝鮮半島引き揚げ者、
13歳の少女ヨーコ。
終戦直後の日本での、貧困、濡れ衣、いじめ。
想像を超える苦難を兄妹3人で生き抜いた。
27年の時を超えて邦訳出版された
前著「竹林はるか遠く」とともに
刊行が熱望されていた続編
70年前の日本にあったもの。それは強い家族の絆〈Kawashima spirit〉だった。
原書『My Brother, My Sister, and I』は、ニューヨークタイムズをはじめ、
数々の書評誌に「名著」として取り上げられた。
ニューヨークタイムズ[A New York Times Notable Book]
全米図書館協会ヤングアダルト部門[An ALA Best for young Adults]
ペアレンティング誌[A Parenting Magazine Best Book]
週刊パブリッシャーズ[A Publishers Weekly Best Book]
第一部
一 一緒になれて
二 火事だぁ!
三 引っ越し
四 病院で
五 朝
六 とがめられて
七 学校で
八 乱れた道徳
九 警察の鑑識課にて
十 腕時計紛失
十一 ついに解決
第二部
十二 お父様は殺されてしまったの?
十三 蚕
十四 大晦日
十五 絹糸
十六 橋の下の掘っ立て小屋
十七 湊さん夫婦と共に
第三部
十八 二十か月──ある秋の日
あとがき
日本語版刊行に寄せて ヨーコ・カワシマ・ワトキンズ
訳者あとがき 都竹 恵子
まずは、前作『竹林はるか遠く』をお読みくださった日本の読者の皆様にお礼を申し上げます。ありがとうございました。出版社より読者の皆様からの感想をコピーしたものが送られてくるのですが、それが届くたびに夫のドナルドと喜びを分かち合いました。
これもひとえに、都竹先生の訳が素晴らしかったおかげです。また、先生をサポートしてくださったご主人の久様のおかげでもありました。お二人にも深く感謝申し上げます。
頂いた感想の中から、特に印象に残ったものをご紹介します。ある男性の方は、シンプルに「感動しました」とだけ書いてくれました。そのダイナミックな書き方は、太平洋からアメリカ大陸を飛び越えて、私たちが住んでいるケープコッドまでその感動が響くように思いました。またある女性の方は、わずかなハガキのスペースに、これ以上小さく書けないくらいの字でこまごま丁寧に書いてくださいました。
感想を次々と読ませていただいているうちに、自然と泣けてきました。読者の方々の中にも、ご自身、ご両親、そしてご親戚が引き揚げを経験した方が多くいらっしゃいました。皆それぞれ引き揚げ体験による悲痛、内地にたどり着いたものの「これからどうやって生きていこうか」という不安、苦痛を味わっています。これは、その「場」を通った人たちにしか理解できません。
ある方の感想に、「苦労したおかげで今は幸福です!」とありました。うれしく感じました。
そうです! この言葉に言い表せない苦労を積み重ねた方々の強い信念により、今の平和な日本が作り上がったと私は信じます。
そして続編である本書の話です。『竹林はるか遠く』の原書が出版された当時、読者の方々から、「その後、兄妹やお父様がどうなったか知りたいです」という便りが続々届きました。しかし、私は「苦しいことは書けない。泣きたくなるから」と、続編を書くつもりはありませんでした。
そんなある日、イリノイ州に住む一人の男子中学生から届いた便りを読みました。彼は、心の底から吐きだした文体で、自分の生活の惨めさを知らせてくれました。
「世の中には未だに不幸な境遇の子供たちがいる。そんないじらしい子供たちに、夢と希望を持たせてあげたい」──そう思い立ち、続きを書く決心をしたのです。
「夢と希望」というと、なんだか空気を掴むようなもののように思えますが、私にとっては「夢と希望」は光り輝く毎日を運んでくれるものであり、誰もが持つことができると信じています。
そんな気持ちで書いた本書『続・竹林はるか遠く』ですが、前作同様、自分の経験を元にした自伝的小説であることを申し上げておきます。
真の「美」が読者の皆様の上にいつも輝いていますように!