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私もラブラドール・レトリバーを飼っています。人と犬との良い関係とはどんなものだろう?。毎日犬と一緒に暮らしていると、そんな疑問が湧いてくるのです。ななえさんとベルナは、その疑問に、多くの答えをくれました。
盲導犬とその主人との暮らしは、犬と人との暮らし方の理想の形ではないかと思いました。どこへ行くにも一緒。犬は主人のかけがえのない目となって誘導し、「グットグット」と褒められるのですから、犬にとってこんな幸せなことはないはず。主人にとっては、命を預けた信頼できるパートナーである盲導犬。私の犬がもし、盲導犬を知ったら、ずいぶんうらやむことでしょう。何しろ、うちの犬にとって一番嫌いなのはお留守番。朝の新聞運びを家族に褒められるときが至福のときで、一日中でも新聞運びをさせてよと目が訴えています。犬は人を喜ばせるのを生きがいにできる動物なのですね。いつからか、犬と人とはそういう関係をお互いに築き合って来たのでしょう。盲導犬にとって辛いのは、社会にまだまだ理解が広がっていない点なのだと思います。
ななえさんが、保育園の園長先生を説得した言葉を忘れません。
「盲導犬にタバコの火を押しつけるなどといういたずらをする人は、人間のほうに問題があるのだと思います。同じように何もしない犬に、いたずらをする子どもがいたならば、その子どもの家庭の方に問題があるのではないでしょうか」ベルナが園内に入ることを園長先生に許可させたこの言葉が重いです。犬を恐れていたななえさんがベルナによってこんなにも変わったということが胸に響きました。
私は以前に、盲導犬は自由を奪われ働かされてかわいそうと思っていました。犬がこんなにも、人を喜ばせたい心を持った動物だと知らずにいたからでした。ベルナはななえさんの育児の手伝いもしていたのですから。幼い命を守ろうとするひたむきさにおいて、犬は人よりいちずかもしれません。
盲導犬を理解する人が増えていくことは、目の不自由な人にとってだけでなく全ての人と犬にとっても幸福なことだと思います。電車でもバスでも、レストランでも盲導犬とその主人とがあたり前に居られる社会をつくれたらいいと思います。車椅子で行く人にも赤ちゃん連れにも、ゆっくりしか歩けない人にもそのペースを守り合って暮らせる街、道路、そんな風景を夢見てしまいます。
視力を失っても、盲導犬と歩き、子育てもしつつ本も書き、それがアニメ化されようとしているって素晴らしいです。ななえさんが切り拓いてきた道と、その生き方を支える多くの人びとを思うと、人間て、こんなにも輝きに充ちた動物なのだと改めて感じさせられます。どうか未来は、人間の輝きの部分で照らされますように。人の友人である犬たちもきっとそう願っているはずです。
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