中日新聞 2001.12.01「話題の人 旬の人」から抜粋

ほたる賞を受賞 坂野豊子

関連書籍

ぼくはゆうれい

 

 

「思いやる心」童話に託す

 

 いじめをテーマにした童話の優秀作に贈られるほたる賞に、主婦坂野豊子さん(37才)の童話「ぼくはゆうれい」が選ばれ、単行本として出版された。いじめを苦に自殺した小学生が、息を吹き返すまでに心の旅をして成長する姿を描いた作品。2人の子を育てながら、執筆した坂野さんに作品についての思いを聞いた。(聞き手・城島 賢治)


──作品の内容は。
 自分をいじめたB君を名指しする遺書を残して自殺し、幽霊になった「ぼく」。復讐心に燃え、B君の家を訪ねてみると、いじめっ子の本当の姿は、崩壊した家庭で日々、母親に殴られ、一人涙を流す寂しい男の子だった。  温かい家庭に育った「ぼく」は、B君の服が破れたままになっていることをからかうなど、何気ない言葉でB君を傷つけていたことに気づくという内容です。


──執筆を思い立った理由は。
 ある日、小学2年生の長男(7つ)に「お母さんは将来、何になりたいの」と尋ねられました。出産のために会社を退職してから子育てに夢中でしたので、正直戸惑いました。「自分の夢って何だったっけ」。答えられない自分に気づき、心にぽっかり穴があいたようでした。
 子どものころにイラストレーターや絵本作家にあこがれていたことを思い出し、自分には何ができるのかなと考えてい時、中日新聞でほたる賞の作品募集を知り、応募することにしました。


──執筆で苦労したことは。
 応募を決めてから締め切りまで3週間くらいしかなく、時間をやりくりするのに苦労しました。家事の最中にアイデアが浮かべば洗濯機のうえでメモを書き、長女(2つ)が昼寝している間に原稿を書くなど、悪戦苦闘の毎日でした。でも、子育て以外に夢中になれることが見つかって、充実感を覚えてたのも事実です。


──作品に込めたメッセージは。
 一歩引いて開いてのことを考える大切さを伝えたかった。これは大人にもいえることですが、対人関係で何かトラブルがあった時に、相手を変えようとするのは難しいことです。
 でも客観的に問題を見つめて、自分を変えようと努力すれば、解決の糸口は見えてきます。そんな冷静さと、どんな問題に直面してもくじけない強さをはぐくんでほしい。それがメッセージです。受賞で自信がついたので、これからも子どもに夢を与えられるような童話を書いていきたいと思います。

 

 


ハート出版