女性自身2002年7月16日号

天国の武蔵への感謝状

武蔵がいたから学校に行けた友達もできた・・・

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「介助犬法案」成立のシンボルとなったラブラドールレトリーバーの突然の死。200日間暮らした車イスの少女稲積久美子ちゃん(13)が涙で語った──。


「久美ちゃん、武蔵くん入院したんや」
 その日の朝、もうぐったりとして動けなかった武蔵、私が学校から帰ってくると、お母さんが心配そうな顔でそう言った。夜に、お父さんお母さんと動物病院に様子を見に行って、息の荒い武蔵の手を握ったの、覚えてる? そのまま武蔵は、翌日の朝、病院で亡くなったんです。

 ねえ、武蔵。最初に会ったとき、私がこわごわしていたの、わかったよね。小さいとき、黒い犬に飛びつかれて、それ以来、犬がこわかったんや。京都の日本介助犬トレーニングセンターで私が武蔵と初めて会ったとき、車イスの私のそばに武蔵はずっと寄り添ってくれた。私がこわごわ武蔵の体に手を伸ばすと、武蔵は静かに尻尾を振ってうれしそうやった。このコなら、仲良くなれそう。武蔵もそのとき、そう思ってくれたよね。
 それから7月末まで週2回、武蔵とトレーニング。私が落としたペンや紙を拾う訓練や、いっしょにお店で買い物をしたり。武蔵は床に落ちた紙をシワをつけずに拾う仕事が得意やったね。「ナイスボーイ」と私がほめると、当然だって顔をしてたっけ。

……7月24日、いよいよ私の家に武蔵がやってきた。武蔵の寝床は私の勉強机の横。毎日のトレーニングから解放されたのがうれしかったのか、ウチにきた武蔵はすごくイキイキしてた。ホントは、決められた寝床で寝なくちゃいけないのに、武蔵はよく私のベッドの上で寝てたよね。「重い!」って目が覚めると、武蔵がいるんだもん。甘えん坊なんだよね、武蔵は。

……11月1日は武蔵の2歳の誕生日。6日が私の誕生日なので、ケーキを買ってもらっていっしょにお祝いをしたよね。「武蔵、ケーキだよ」って言っても、武蔵はテーブルの上をちょっとのぞきこんで、全然興味ないみたいだったけど。映画をいっしょに見に行ったのはこの頃だったかな。友達2人と40分くらい歩いて映画館に『犬夜叉』を見に行った。みんなでプリクラを撮ったり。こんなふうに外に行けるようになったのは武蔵のおかげだよ。もともと私は人見知りで、すぐ赤くなる性格なんだ。だからクラスメートともあんまししゃべらんかった。それが武蔵がいっしょにいてくれるおかげで、がんばって自分の気持ちをみんなに伝えられるようになったし、それで友達もいっぱい増えたよ。

……その晩、私の家で武蔵のお葬式をしたよね。クラスメートや学校の校長先生も来てくれて、みんなが持ってきてくれたお花の中で武蔵は一晩眠ったね。それまでみんながいる間は不思議だけど泣かなかった。でも夜遅く、一人になってから、大声で泣いたよ。短い時間だったけど、たくさんの勇気をくれた武蔵。天国に行っても、いつまでも武蔵は私の心の支えだからね。  

 


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