濱井千恵リポート
写真左が濱井さん、右がマックリモンさん
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岡山愛護会は北アメリカ出身のメアリー・マックリモンさんが長年会長を務め、日
本に於ける動物福祉の改善を求める啓発ポスターを製作したり、動物愛護資料の配布
や『おもいやり』という会報誌の発行、新聞などに里親探しの掲載などを通じて、行
政や一般市民に動物愛護を呼びかけている会です。動物たちの収容施設がない会なの
で、会員宅で一時預かりをしながら、代表のマックリモンさんのみならず会員の方々
が身銭を切って、動物たちを救っている資金面でも決して裕福な会では無いと思いま
す。
既に御高齢のマックリモンさんの事を、3年前に他団体の代表者から紹介されたと
き、不幸な日本の犬猫達にこのようにご尽力下さる愛護会に私なりの気持ちを伝えた
くて、ささやかな寄付を送らせていただきました。すると会長自らお礼のお電話を下
さり、沢山の会の活動資料や機関誌を送って下さったのです。その中の一つ、機関誌
『比較動物観 日本・英米今昔』を拝読したとき、私はマックリモンさんの深い哲学
的思想に裏打ちされる真の動物愛護家の姿を見せられた気がしたのです。トーマス・
ハーディーを紹介しながら人間の手によって商品化され、或いは遺棄・虐待される動
物たちの悲しみが、彼女の宗派にとらわれない人道的宗教観によって紹介されていま
した。
盛況だった講演会のようす
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以前から岡山は随分動物の福祉が遅れている県だと聞いていたのですが、私の処女
作でもある「この子達を救いたい」のピーコの笑顔に涙して下さった読者の方達から
の手紙やメールは後を絶ちません。ですからそんな心優しい読者の人たちが住んでい
る岡山が、動物に関心が薄いとはどうしても思えなかったのです。
ピーコと私を応援して下さる読者の方達と会いたい。マックリモンさんとお会いし
たいという思いが、今回一人の愛読者の呼びかけを契機に、3年目にしてやっと実現
できたのです。
動物愛護地方議員の会に属しておられる先生方もお忙しい中お越し下さり、130
名位のお客様を迎えて手話通訳も交えながら私の拙い講演が始まりました。
まず何よりも岡山の講演で私は、動物実験払い下げの廃止を北海道に続いて実現し
て欲しいことを御願いしました。既に両県の広島市と兵庫県は払い下げを廃止してい
ます。岡山は動物に心を寄せて下さる議員の先生が4名もいらっしゃるとても心強い
県です。先生方と岡山愛護会、そして来場下さった方々の切実な声が古い因襲を崩す
ことができるのだと訴えました。
次に学校教育のゆとりの時間に愛護教育の導入を訴えました。動物の福祉を実践で
きる次世代作りのためにも、そしてそれはひいては人間性の回復の為にも、今この時
期に愛護教育が如何に必要であるかを訴えました。その導入方法として、獣医師や動
物管理士の方々の協力を仰ぎ、子供たちに動物の習性を教え、ひいては他種生物の命
を尊ぶことは自然を守っていくことと同じであることを訴えました。又物を言えぬ生
き物と達のボディーランゲージを学ぶことは、人間関係すらも潤滑にさせることを自
分の家のワンコやニャンコを通じて話をさせていただきました。
犬や猫は決して野生動物では無いのです。何千年という気が遠くなるような歴史の
中で人間の手の中で生きるように改造されているのです。彼らが人間の手から放れる
ときはそのまま死に直行するしかありません。
犬や猫を安易に捨て、殺すこの社会の悪循環をどこで断ち切るのか。行政と保護団
体、獣医師そして市民が感情論でぶつかるのでは無く、社会問題として取り扱って行
かねばならない問題まで来ている事を訴えました。そのためにも岡山でも動物愛護条
例の中で、動物取扱業者の許可制や虐待の定義をしかと銘打つことの必要性も訴えま
した。
著書にサインする濱井さん
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そして捨て犬や捨て猫を拾った人が保護団体に押しつけたり、近くに置いていくこ
とは犬猫を捨てる人と同様の犯罪に等しい行為であることも話をさせていただきまし
た。自分の善意と言う名の自己満足を人に尻拭いをさせる行為を私はやはり戒めるべ
きだと思うのです。
最後に恒例の『ピーコの祈り』の紙芝居を朗読させていただきました。小さなお子
さんのみならず、やはりピーコの悲痛な叫びに多くの大人達が涙を流してくれまし
た。ピーコはその涙をいつかきっと喜びの涙に代えて下さいと祈り続けているので
す。
今回の講演には広島からも動物管理士の方々が10名も駆けつけて下さり、11月
22,23日は広島でも講演させていただくことになりました。
私はこの活動を通じて、真面目で優しい人が心身共に消耗し潰れてしまう姿を幾人
か見てきました。そんな人たちがこっそりと私の講演を見て下さる姿に、私の方が胸
が詰まってしまいました。
これほどまで遅々とし変革に時間を要す活動が他にあったのでしょうか?
これほどまでに命を救う活動でありながら、行政にも教育関係にも受け入れて貰え
ない活動が他に存在するのでしょうか?
植林をし森を守ることは高く評価されるのに、どうして犬猫の命をを守ることが過
激な行為だと非難されるのでしょうか?
何故動物の愛護は日本では育たないのでしょう?
毎日大量に消えていく命。明日は必ず恐怖と絶望に追いやられて殺される命が確実
にあるというのに、テレビやネット販売で次々と芸能人が飼っている犬や猫が売られ
ています。最近ではあなたの好みのミックス売りますーという見出しが週刊誌の広告
に載ってるのをみつけました。多頭飼育崩壊や虐待の知らせが絶えることが無いのは
何故なのでしょうか?そう言うことを本気で考える人たちと出会いたくて私はピーコ
の紙芝居を片手に、全国どこにでも走っていきたいと思っています。
この1,2年、日本の多くの場所で動物のパネル展は随分開催されたと思います。
今年から来年は動物愛護法の再改正に向けて、市民に動物の現状を知らせる活動から
動物の遺棄、虐待、殺処分を如何に減らし、無くしていけるかのか、その具体的方法
を考え実践していく活動に変化していくべきなのではないでしょうか?
具体案を実践するときにこそ、マックリモンさんのような深い愛に満ちた真の指導
者が必要なのだと私は痛感しました。
TAPS代表 濱井千恵
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