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ピンポーン。巣に仕掛けたセンサーが50メートル離れたテントに知らせる。母鳥が食べ物を探しに出かけた。巣に駆けつけ、卵やひなが冷えないよう電気毛布をかける。
「雨のなか、野外で11時間も母鳥の帰りを待ったことがある。2週間、毎日徹夜に近く、疲れました」
ニュージーランドのコッドフィッシュ島は昨年、大忙しだった。カカポのひなが24羽も巣立ったのだ。
メスだけで子育てするから「巣守り」は大事だ。ボランティア仲間が英、米、独などから100人余。
全部の巣をビデオで観察し、卵やひなのお守りが5月まで4カ月続いた。
カカポは、ニュージーランドだけにすむ飛べないオウム。夜行性。エメラルド色の羽毛に覆われ、体長60センチ、体重は最大4キロ。
出会ったのは13年前。雑誌編集者として動物写真家・岩合光昭さんのネガを見ていて、目がとまった。絶滅の危機だと知って「カカポ基金」をつくった。
ニュージーランドを本拠地に、テレビや翻訳の仕事をしながら、日本でも基金活動を続け、あっという間に12年。
「カカポが私の人生を変えました。人の心をつかむのは確かです。つぶらな瞳で何か考えている。鳥というよりほ乳類みたい」
70年代はオスしか見つからず、絶滅必至といわれていたカカポが、人々の努力と政府の救済計画で少しずつ増え出した。「大繁殖」の2002年、計86羽に回復した。
光が見えてきた。
清水 弟
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