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チビちゃんの桜…山崎香織 著
著者に聞く
子猫と女の子が過ごしたわずかな時間と、一本の桜に込められた深い悲しみと感動を描いた児童書「チビちゃんの桜」が、ハート出版主催の「ほたる賞」第8回グランプリ作品に輝いた。著者は水戸市在住の主婦、山崎香織さん(45)。「いつかは書きたいと思っていたチビちゃんへの思いを形にできて満足している」と喜びを語る。
同賞はいじめをなくすことをテーマに思いやりや勇気などを描いた作品を募集。グランプリ作品を毎年出版している。今年は113点の応募の中から同作品が選ばれた。山崎さんは結婚を機に小学校教諭を退職後、「自分の思いを一つの形に表したい」と主婦業の傍ら、15年ほど前から執筆活動を始めた。小さいころ聞いたこわい話をヒントにした子ども向けの物語を書き、早くも才能を開花。86年のカネボウミセス童話大賞優秀賞を皮切りに、数々の賞を受賞している。
「チビちゃんの桜」は大人になった主人公が娘を連れ、畑の中にそびえ立つ桜の木「チビちゃんの木」を訪れたことから始まる。実話に基づき構成され、主人公は小学校低学年の山崎さん本人。
なぜ、その木が「チビちゃんの木」なのか。時間は主人公の小学校時代にさかのぼる。「子どものころの自分と向きあって書いた」と話し、愛する猫「チビちゃん」への深い愛情を失った悲しみがゆっくりとしたテンポで語られている。
幼い日をsごした美野里町の情景は、古き良き日本の象徴として描かれている。「生まれ育った町が大好き。挿し絵は実家の写真を送って描いていただいたので、雰囲気がそのまま表現されている」と仕上がりに太鼓判を押す。
現代のペットブームの裏側に潜む、動物虐待などに心を痛めている。
「動物たちは深い情を持っている。だから動物を裏切らないでほしい」と訴える。
チビちゃんと過ごした数か月から感じることができた「人間と動物は分かり合える」という強いメッセージ。多くの人に読んでもらい、命の大切さを考えてもらうきっかけになってくれればうれしい。きっとチビちゃんもそう思うはず」と、心の中にいつまでも生き続けるチビちゃんに語りかける。
茨城新聞2003年8月10日(学芸部・杉本実季)
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