「毎日新聞」2004年1月19日

食い込む首輪1年3か月かけはずした 

高知の夫婦・野良犬救出
心通う日待ちわび
共感の輪 奮闘記本に

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 高知県安芸市に、心ない飼い主に首輪をつけたまま捨てられた雑種の幼犬がいた。成長につれ首輪が首に食い込み、極度に人をおそれ、逃げ回った。その犬を1年3か月がかりで救出した人々の奮闘を描いた「のら犬ゲンの首ををはずして!」が、ハート出版(東京)から出版された。ゲンはいま、新たな飼い主の元で元気に暮らしている。


 保護したのは同市庄之芝町、自営業、池川公一さん(65)。01年11月、自分の愛犬と散歩中に、川岸の土手で野良犬と出合った。おびえたように草むらに隠れる犬は、毛が汚れ異臭がした。よく見ると、首輪で締め付けられていた首が化膿していた。
 何度か出合ううち、犬は池川さん宅までついてくるようになり、妻の佐鶴子さん(60)と相談して餌をやり始めた。雄で、「元気になってほしい」との願いを込め、元気の「元」を取ってゲンと名付けた。しかし、治療のため捕まえようと餌に睡眠薬を混ぜても、よだれを流しながら逃げ、捕獲箱にも警戒して近寄らなかった。
「このままでは首輪が締まって死んでしまう」。池川さん夫妻は昨年2月、獣医や市の職員、消防署員らと協力しゲンを捕獲した。首輪の直径は約30センチ。ゲンの首回りは約40センチだった。この救出劇は話題になり、話を知ったノンフィクション作家の関朝之さんがこのほど、本にまとめた。
 池川さんは既に何頭か犬をかっており、ゲンは知り合いの安芸市の“里親”に預けられた。胴輪が外れ、一度は逃げたしたが、池川さんはすぐには捕まえず、近所に姿を見せたゲンを約20日かけ網で捕獲した。
 池川さん夫妻は「虐待を受けたことがあって、あれほど人を恐れていたのでしょう。じっくり向かえば、そのうちにもっと心を開いてくれるはず。その日まで見守っていきたい」と反している。

毎日新聞2003.01.19

 


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