交通事故から九年、ぼく元気に生きてるよ―。平内町のパート勤務三津谷美也子さん(51)が、車にひかれて足を失いながらも懸命に生きる猫の「一二三(ひふみ)」との触れ合いを描いた物語がこのほど「人の生き方を変えた猫ひふみ」としてハート出版(東京)から刊行された。刊行元が昨年実施した第一回「キャッツ愛童話賞」でグランプリを受賞し、出版化の運びとなった。三津谷さんは「一二三の頑張りを読んでほしい」と話している。
三津谷さんは1996年の暮れ、青森市内の雪道を車で走行中、わだちに挟まれもがいていた雄の黒い子猫を拾った。車にひかれたらしく右の前足、後ろ足がつぶれた状態だった。一度は通り過ぎた三津谷さんだが「私を呼んでいる。私じゃないと助けてあげられない」と運命の出会いを感じ傷ついた子猫を抱き上げた。その人が12月30日だったことにちなみ「一二三」と名付けた。
本紙投稿に反響
物語は、一二三が動物病院で足の切断手術をする苦難を乗り越えながら左の二本足だけで歩けるまで回復、ネズミを捕まえたり、ほかの猫とケンカするほど、たくましく成長していく様子が描かれる。
「みや子さん」として登場する三津谷さんも、世話に振り回されながら「自由に動けない者のために自由に動けるだけでも自分は幸せだなあ」と思うようになる。
また、三津谷さんが、猫のために義足やおむつカバーに関する情報を、当時の本紙投稿欄「おんなの広場」で呼び掛けたところ、県内各地から六十八通の手紙やはがきが届き、励まされた経過も描かれた。
一二三の愛らしい写真や、三津谷さんが住む平内町周辺の季節の移り変わりの描写も随所に折り込まれ物語をもり立てている。
公募でグランプリ
新聞や雑誌への投稿が趣味の三津谷さんは一二三の物語を五、六年前から四百字詰め二百枚の原稿に仕立てていた。出版のあてもなくいたところ昨年、本紙で童話賞の募集を知り、子ども向けに百枚の原稿用紙に書き直して応募。五十点の作品の中から最高賞に選ばれた。「夢がかなって大満足」とうれしそうな三津谷さん。「一二三の頑張る姿にはきっとパワーをもらえるはず。これからも自分がこの子の右手右足になっていきたい」と話している。
(東奥日報2005年5月13日)
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