十日町新聞2006年4月30日

災害救助犬「トマト」が一冊の本に

震災影響で突然死、5月から全国発売

 県内初の災害救助犬の第三種認定を受け、ボランティア組織「災害救助犬十日町」(西方隊長)のエース犬として数々の人命を救うなど活躍し、中越大震災発生からちょうど1カ月目になくなった「トマト」の障害が1冊の本にまとめられ、5月2日から全国発売されることになった。
 市内上川町のDTSケンネルの西方真代表(36)の愛犬だったメスのジャーマン・シェパードのトマト。その死をネットのトップニュース「新潟中越地震・名災害救助犬『トマト』死す」の記事で知ったフリーライターの池田まき子さんが、在住していたオーストラリアから取材を申し入れ、昨年11月に来市し密着取材のうえ、このほど「出動!災害救助犬トマト〜新潟の人々とペットを救った名犬物語」として出版される。
 日本一の災害出動回数を誇る「災害救助犬十日町」。「トマト」はそのトップ犬として年に20回超、延べ約百回の出動と日本一の救助犬として愛され活躍した。
 トマトは救助犬審査会で第一種の山林捜索と第二種の倒壊家屋捜索の両方に合格し県内初の「第三種」認定犬としても知られている。同書ではそこに至るまでの厳しい訓練やハンドラーである飼い主の西方さんとの出合いから別れまでを、無償のボランティアとして活躍する災害救助犬十日町の活動内容、そして震災で立ち上げた被災動物保護センターやその支えとなったトマトの様子なども交えながら紹介されている。
 トマトの死は突然だった。その一週間前にはトマトの娘であるメスのパイロン5歳が腸捻転で急死し、前日まで元気だったトマトもストレス性胃捻転で9歳の生涯を閉じた。保護センターを立ち上げてからそれまで毎日行っていた訓練や運動ができなくなり環境が大きく変化したのが原因と見られている。仲間の励ましで自分を責める西方さんがトマトの死を乗り越えボランティア・レスキューチームを結成し、トマトそっくりな可愛い二代目トマトに出会うまでをドキュメンタリータッチで描いている。
 西方さんは「トマトは最後まで救助犬として死んでいった。保護センターで動物を預かれば、それまでペットがいるため入れなかった避難所にも入れるようになり、人が助かる。そのためトマトはストレスが溜まり死んだ訳だが、人を救うのが救助犬の役割。トマトは最後まで救助犬でした」と語っていた。
 著者の池田まき子さんはこれまでも交通事故で下半身マヒになった「車いすの犬チャンプ」や「三日の命を救われた犬ウルフ」など、ドキュメンタリー童話・犬シリーズの作者として定評があり、訳書「すすにまみれた思い出・家族の絆を求めて」(金の星社)で産経児童出版文化賞を受賞している。
 池田さんはあとがきで「死後5カ月もたってからニュースになったことを不思議に思い、同時に災害救助犬としての一生に興味がわき、トマトと周囲の人たちとの触れ合いがどんなものであったかもっと色々な事を知りたいという気持ちが、次第に抑えられなくなった」と執筆の動機を語り、「災害救助犬の卓抜した能力や災害救助に取り組む人たちの精力的な活動を描くことで、災害救助犬の実態を広く知ってもらい、人間と動物の絆、人間と動物が一緒に暮らすことの意味などについて、考えるきっかけになればという願いも込めた」と話している。



十日町新聞2006年4月30日

 


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