毎日新聞大阪版2007年1月13日

心臓移植の体験、児童書に

「命」と「笑顔」をもらいました

和歌山の小3「みーちゃん」
ドイツで心臓移植手術を受けた和歌山県岩出市立中央小3年の井辺美摘ちゃん(9)と家族、支援の人々を描いた児童書「いのちの鼓動が聞こえる」(ハート出版)が出版された。筆者は豪州在住のフリーライター、池田まき子さん(48)。美摘ちゃんの両親が「臓器移植の理解につながれば」と協力した。
美摘ちゃんが拡張型心筋症の手術を受けたのは05年6月。多額の費用は募金を呼びかけ、寄付でまかなった。術後の回復は順調で同年11月に学校に復帰した。
国内の実情を調べるなど、臓器移植に関心をもっていた池田さんは06年7月、和歌山を訪問。父吉則さん(47)と母文子さん(44)に出版を提案した。「本はずっと残ってしまいそう。そっとしておいたほうがいいのではないか……」。2人は戸惑いながらも、「臓器移植を理解してもらい、闘病中の人たちに希望を与えられたら」と取材に応じた。
「ドイツの男の子から、心臓をもろうたんや」「大切にせんとあかんよ。感謝せんとな……」。手術後しばらくして、美摘ちゃんに文子さんが語りかける場面だ。発病から入院、支援の広がり、手術を含めたドイツでの様子などを、本人や周囲の人々の気持ちや表情を織り交ぜ紹介している。
今、美摘ちゃんは小学校の運動場を駆け回り、「友達と遊ぶのが好き」と笑みが絶えない。池田さんは「『命』を大切にするためにもこの本が役立てば」と話す。

毎日新聞大阪版2007年1月13日

 


ハート出版