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■　ハート出版の犬と人シリーズ　■

愛犬ムクと幸せ半分こ

犬と人はここまで仲良くなれる

第３回わんマン賞受賞作品

中岡正代　著　2000.02.20　発行　　

ISBN 4-89295-154-4 C0036　四六並製・224頁・定価 1430円（本体 1300円）

　ムクと出会えたこと、それは私にとって「最高の運命」だったと言えます。しかし、なぜ出会えたのか、現実を考えると複雑な気持ちになってしまいます。なぜなら、ムクは捨てられていたのだから……。
　寒い季節、もし誰にも気づかれずに、あのままでいたらどうなっていたことか……。誰が考えても分かることでしょう。
　ムクを置き去りにしたその人を、私は許せないけれど、心から憎むことはできません。その人がいなかったら、私はムクの存在を知ることができなかったから。それに、こうも考えられます。どうしても飼えない事情があり、誰かに可愛がってもらえることを祈りながら、その場を去ったのではないかと。そうであって欲しいと私は願っています。でなければ、同じ人間としてあまりにも情けない気持ちになってしまうから。
　世の中には、飼い主に見放されてしまった犬が数多くいます。また、「動物虐待」という言葉もよく耳にします。動物が好きだとか嫌いだとか、そんな言葉を口にする前に、まずそこには「命」があるということを忘れないでください。
　自分のものではない「命」。その命を大切にすることは、自分の「命」を大切にすることにもつながると思います。守りたいもの、守らなければならないもの、それがあるのとないのとでは、自分の気持ちはもちろんのこと、毎日の生活までもがガラリと変わってしまいます。私にとって、それがムクでした。
　私はムクと初めて交わした約束の通り、たくさんの愛情を注いであげたつもりです。もちろん、ムクもそれに応えてくれました。茶目っ気たっぷりの仕草や、豊かな表情で……。
　ムクに限らず、犬は愛情を注いであげれば、それ以上の優しさで応えてくれます。話しかければ、その言葉の意味を理解しようと真剣に聞いてくれます。少しでも気持ちが通じ合えることを望んでいるのです。
　ムクとの出会いから始まった、私とムクの物語。楽しいとき、嬉しいとき、悲しいとき、辛いとき、いつも傍にいて、どんな感情も仲良く半分こにして過ごしました。共に成長し、やがてかけがえのない存在になりました。
　ムクのことを好きだから、大切な思い出だから、ただ「残したい」そんな気持ちで文章にしました。これを読んで、「うちの子のほうがもっと幸せだわ」 と思う人もいるでしょう。犬好きの私にとって、そう感じてくれる人が多くいるほど、嬉しい気持ちになります。

■　中岡 正代 （なかおか まさよ） 　■

1975年１月28日。福岡県生まれ。 福岡女子商業高等学校卒業。現在、福岡市在住。 家族は父、母、犬（チェリー）。 趣味はお菓子作り、チェリーと遊ぶこと。

優秀賞　　　ムク．ありがとう　田嶋美裕