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■ ハート出版の犬と人シリーズ ■


マルコの東方犬聞録


日本の犬だけには生まれ変わりたくない!


マルコ・ブルーノ 著 2000.02.24 発行  

ISBN 4-89295-157-9 C0036 四六並製・224頁・定価 1430円(本体 1300円)

 

はじめに

マルコの東方犬聞禄…日本人が気づかない犬たちへの虐待。愛護が愛護になっていない実態。誰よりも日本を、そして動物を愛する著者が書いた日本人への渾身のメッセージ(ハート出版)

 三十四年……長いなァ。ぼくは三十四年間も日本に住んでいる……人生の半分以上。なんだか、ふくざつな気持ちになる。

 最初のころ、ぼくは、日本の習慣や日常のライフスタイルになじむために、無我夢中で頑張った。あこがれの日本だもの。新しいおもちゃをもらった子どものように、うきうきしていた。一日も早く、日本の生活にとけ込みたかった。この国を第二のふるさとに選んだことが、失敗ではなかったという実感にうえていた。

 当時の日本は想像どおりの国だった。

 毎日が感動的だった。

 人には情があったし、礼儀正しい挨拶とあたたかみのある微笑みが町にあふれていた。

 この国が、やがて、これほどかわるとは、夢にも思わなかった。

 たったの三十年で、平和に暮らしながら、これほどのはげしい変化をとげる国は珍しい。浸水している大きな船のように、傾いたままで航海をつづけている姿は、実に悲しい。

 三十四年前、ぼくが日本に行く決心をしたとき、日本についての情報は乏しかった。詳しいことはわからなかった。それでも、到着した日に羽田から渋谷へ向かったときも、はじめて箸を使ってなれない手つきで納豆を食べたときも、恵比寿の酒屋の立ち飲みカウンターで一五円の焼酎を飲んだときも、ぼくは、なんのカルチャーショックも受けなかった。

 ぼくがカルチャーショックを受けたのは、来日したときではなく、渋谷区から足立区へ引っ越したときだった。

 捨て猫や捨て犬の数にショックを受けた。

 栄養失調の犬が道路の真ん中に行き倒れになっている、どこの公園にも捨て猫だらけだし、荒川河川敷のいたるところで、捨てられた犬、猫、鶏、ウサギ、蛇などの腐乱死体が目につく。

 あとでわかったことだが、足立区だけがひどいわけではない。

 日本にはもっと悲惨な場所がたくさんある。埼玉県や千葉県とくらべると、足立区の動物状況はまだましなほうらしい。

 そして埼玉や千葉より、宮崎県や長崎県の動物に対する考え方や扱い方はもっとひどい。あそこには「不用犬ポスト」、つまり、いらなくなった犬や猫のゴミ箱がある。

 そして山梨県には「犬捨て山」がある。

 へェー、日本はこういう国だったのか。そう、日本は人間中心の社会だ。 動物と植物は使い捨てできるモノにすぎない。法律上でもそうなっている。

 生き物として認めてくれない。 動物のことを調べれば調べるほど、背筋が寒くなるような現実にぶちあたってしまう。

 二千年の歴史を持つ、文化レベルの高い日本にはこのような粗末、そして悲惨な面もあったのか……信じられない! 

 そしてもっと怖いのは、日本人のほとんどはその現実を知らない――それとも、見て見ぬふりをする無責任な民族なのか?

 ぼくは見て見ぬふりをすることのできない性格だ。

 小さいときから、動物を通じて、このような教育を受けてきたから。

 なんとか改善できないかと思い、動物の救済にのりだしたのは、もう十六年前のことだ。

 いまは、捨て犬や捨て猫を保護したり、里親に出したりの忙しい毎日がつづいている。そして家では、十二頭の捨て犬と八匹の捨て猫がぼくらとおなじ釜の飯を食い、寝床をともにしている。 ぼくらは、いま、大きな仲よし家族だ。

 いまは動物ボランティア活動におわれている。本来、これらの仕事はすべてが行政、つまり保健所のやるべきことだ。言葉は悪いが、日本の保健所はクソの役にも立たない。生かす方法より、殺す方法に熱心な行政指導では、動物たちの将来は真っ暗。

 戦後の日本は「数の論理」という考え方を社会、政治、経済などに取り入れ、急成長を遂げた。

 追いつけ! 追い越せ! という時代の始まりだ。

 でも、このような物理的な豊かさを手に入れるための代償は、とてつもないものだった。文化、伝統、習慣、家族構成ばかりではなく、日本人はこころの豊かさまで失った感じがする。思いやりも、優しい微笑みも、すべてが戦後の使い捨て時代の犠牲になった。

 ぼくは動物ボランティア活動を通じて社会に役立ち、助けを求めている動物たちに応えてあげたいと考えた。ところが、日本における動物問題に深くかかわるほど、行政や地方自治体の動物に対する残酷な考え方と動物ボランティア団体の仲の悪いことにおどろかされると同時に、個人の力には限界があると思い知らされた。

 現代のペット問題をトータルで考えると、穴のあいたバケツで浸入してくる水をくみ出すような終わりなき戦いとわかった。

 しかし、あきらめることができない。

 あと百年かかっても、ぼくはあきらめない。

 行政を動かせないのであれば、世論に訴えるしかないと考え、この本を書くことにした。

 なんだ、また日本たたきの本だと思わないで。そういうつもりで書いたわけではない。

 ぼくは日本が好きだ。好きだから見て見ぬふりはできない。好きだから放っておけない。 「動物に優しい日本、人間とペットが快適に共存できる日本はどういう日本なのか?」  読者の皆さんといっしょに考えてみたい。

 

 

目 次

 

 

      動物暗黒地帯・NIPPON

      畜生と呼ばれている犬たち

      「市」の愛護センターは「死」の愛護センター

      人間主役の動物保護法

      ザ・犬捨て山

      たいへんだ! ボランティアは

      犬博士、猫先生

      かわいいパートナーのために

 

 

著者紹介

 マルコ・ブルーノ (Marco Bruno) 

 

1945年、オーストリア生まれ。20歳のときに来日し、以来36年。映画「ナイル殺人事件」の主題歌などを作詞する他に、翻訳や童話執筆、プロの写真家としても知られ、多彩な活動を展開している。著書にポプラ社刊「ペットはぼくの家族」。ハート出版刊「マルコの東方犬聞録」「幸せな捨て犬ウォリ」「犬に尊敬される飼い主になる方法」などがある。 現在、犬や猫の里親探しに奔走、日本の動物行政の不備を見かねて、その改革に立ち上がっている。犬や猫に限らず、いのちあるものを「物」としか見ない日本の行政や、今の日本人の感性に疑問を持ち、昨今の青少年の心の荒廃は、こうした動物蔑視、いのちの軽視に原因があるのではないかと、考える一人である。 なお動物愛護支援の会のHPで会員募集、里親探しを行っている。

 

ニュース

2004.03.17

「痛快!エブリデイ」にマルコさん出演

2004.03.06

外国から見た日本の動物愛護〜ここが変だよ!日本の犬事情〜

2003.08.27

「愛犬チャンプ」でマルコさん紹介(愛犬チャンプ2003年10月号)

2003.07.26

第2回WANWANPARK

2003.07.18

犬に尊敬される飼い主になる方法(足立よみうり2003.7.18)

2003.06.18

飼い主のしつけ本(東京新聞夕刊2003.06.18)

2003.01.30

犬のために何ができるだろうか?マルコ・ブルーノ(いぬのきもち2003年2月号)

2002.05.09

「美しい町」(TBS系)でマルコ・ブルーノさん捨て犬問題を語る

 

犬本読書感想文

最優秀賞 マルコの東方犬聞録を読んで  宇田美津江

 

読者の声

 

おすすめの本

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