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■　ハート出版の児童書　■

こうぼ　とべないホタル

読者が書いた「私の中のとべないホタル」

第４回ほたる賞受賞作品

小学校中学年以上向き

小沢昭巳　編　1999.05.28　発行

ISBN 4-89295-228-1 C8793　Ａ５上製・128頁・定価 1100円（本体 1000円）

「とべないホタルと仲間たち――信じあえる大切なもの」をテーマに募集された「第４回ほたる賞」受賞作品集。 　ほたる賞はこれまで「いじめを考える作文」を募集してきたが、今回は童話の募集になった。全国から集まった作品の中から、ミリオンセラー童話「とべないホタル」の作者・小沢昭巳氏が選んだ５編を収録。

　この童話集は、作者の五人の方々が、それぞれ心の中で育み、生み出してくださった「とべないホタル」の物語です。
　「とべないホタル」は生まれつき羽がちぢんでいて飛ぶことができません。「どうして、ぼくだけがこんな羽に……」といつも悲しく思っていました。でも、まわりのホタルたちは、とてもやさしく、羽のことなど気にしないでいっしょに遊んでくれました。
　この物語は、私の子どものころの思い出から生まれました。半世紀以上も前のことです。日本は、太平洋戦争のさなかで、中学生だった私たちまでが工場に通い、高射砲の弾丸をつくっていたのです。そのころの「工場日誌」が残っています。

――昭和二十年七月。夜勤。空襲警報入る。……伏木にて照空燈を照らし、二回、敵機を捕捉して、高射砲を放つ。白く浮き出されたＢ の周囲に破裂する弾丸……。（ネジを切る仕事を）三名がやっていた。越前、金子は午前中で仕上げたが、小沢は目が悪いので半分ほどしかできていない。越前、金子は自分だけ遊ぶのは悪いといって、小沢の分を助け、三人共に終へて、それから休んでいた。美しい光景だった。（『工場日誌』「高岡中学・高岡高校一〇〇年史」から）

　中に出ている「小沢」という生徒が私です。幼いとき、片方の目を失い、障害者として生きていた私は、友人たちに支えられ、戦争中をやっと生きていたように思います。童話「とべないホタル」は、その思い出をホタルの世界に移して書いたのです。
　このような思い出は、誰もがみな心の中に残しています。作者の方々は、それをお書きになったのだと思います。「とべないホタル」の視点に自分を移し、その風景を童話風に書いてくださったのだと思います。 　この童話集は、ハート出版のほたる賞第四回受賞作品集です。応募された作品は、期待以上のものでした。どの作品にも、美しく、そしてどこか悲しい心の風景が、ホタルの明かりのように明滅していました。 　童話「とべないホタル」は、本になってもう一〇年がたちます。その間に映画やテレビ、ステージや絵本、そして英語や仏語、中国語や韓国語になって、いろんなホタルが飛び立っていきました。しかし今、この童話集によって、新しい時代のホタルが、ほんとうに誕生したように思います。

小沢　昭巳

■　小沢昭巳（おざわ　あきみ）　■

１９２９年富山県朝日町生まれ。小学校教師のとき壁新聞に「とべないホタル」を書く。時を経て、１９８８年、『とべないホタル』（ハート出版）刊行。高岡市万葉歴史館研究員、国立高岡短期大学講師を経て執筆に専念。

著書に「とべないホタル」シリーズ、「ＨＩＫＡＲＵ」（英語版とべないホタル）、「一人ぼっちの狼と七ひきの子ヤギ」、「さるの嫁っこ」等の童話のほか、教育史、郷土史など多数。

第１回ほたる賞受賞作　翔べ！心のホタル

第２回ほたる賞受賞作　あの人に伝えたいこと

第３回ほたる賞受賞作　私のいじめが消えた日

第４回ほたる賞受賞作　こうぼ　とべないホタル

第５回ほたる賞受賞作　ゴムの手の転校生

第６回ほたる賞受賞作　ぼくはゆうれい

第７回ほたる賞受賞作　星をまく人

第８回ほたる賞受賞作　チビちゃんの桜

第９回ほたる賞受賞作　おかあさんのパジャマ

第10回ほたる賞受賞作　いのちはどこに入ってるの？

第11回ほたる賞受賞作　メル友からのメッセージ

第12回ほたる賞受賞作　りそうのくに

第13回ほたる賞受賞作　となりのトンコやん

第１回ほたる賞応募作　いじめを考える作文集