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星をまく人

沖縄の小さな島で織りなすファンタジー


“自分らしさ”をさがしている子どもたち
ピュアな生き方を求めている大人に贈ります

第7回ほたる賞受賞作品

小学校中学年以上向き


竹田 弘 作・高橋貞二 画  2002.07.27 発行  

ISBN 4-89295-270-2 C8093 A5上製・64頁・定価 1100円(本体 1000円)

 

内容紹介

星をまく人──沖縄の小さな島で織りなすファンタジー(第7回ほたる賞受賞作品)

 沖縄・南西諸島のある島――、自然農法に汗しながらひっそりと暮らす、風変わりなおじさんがいました。そこにある日、親の離婚と登校拒否で悩んでいる少女が訪れます。少女はおじさんの畑仕事を手伝ううちに、生きている喜びと笑顔を取り戻すようになりました。そして、おじさんが長年、思いあたためてきた「夢」の手伝いをすることになったのです。それは“ある光”を育て、島いっぱいにして自然の姿を呼び戻すという、壮大なものでした……。
 実在する昆虫とモデルをもとに、紡ぎ出された極上のファンタジー作品です。

 

 

あとがき

 ひとりぽっちで苦しんでいる時期がありました。どうにかして悲観的な考えから抜け出そうと、もがいていました。そんなときにある人びと(仕事をしながら、彼らは絵を描いたり、詩を書いたりしていた)に出会い、このホタルの物語を思いつきました。それから何度も書き直しました。
 けれどいつも自分のイメージにもうちょっとで届かないジレンマに陥って、また書き直しました。しばらくするとまた気に入らなくなってやり直しました。そうこうしているうちに十年の歳月が流れました。まるで夜空の星に手を伸ばしているような感じでした。確かに見えるのだけど届かないんです。
 そして今年、自分に決着をつけるためにもう一度書き改め、この賞に応募しました。それでずいぶんすっきりしました。思えば、この物語の創作活動というのは、子どものころの自分に出会うための、長い長い旅だったのかもしれません。そしてもうこの物語のことは忘れていました。
 さて、僕は自然が好きですが、忍耐力がないので生物の観察は苦手です。名前もすぐに忘れてしまいます。けれど僕には僕の観察の方法があって、野外で虫や鳥、ヘビやコウモリなんかを見つけると適当に名前をつけ、ぼんやりと眺めます。そのうち彼らが笑ったり、話しかけてきたりします。そんな錯覚に陥るんです。昨日あったこととか、昼ごはんのこと、最近あったおもしろい話とかを彼らはしてくれます。そういうのを集めて童話をつくります。
 生き物を題材に物語を創る、これも自然を理解するひとつの方法だと思うんです。自然を科学的に理解することは確かに必要です。けど、自然を心で理解することも大切です。つまり詩的な理解です。
 そして、その心は人間を理解するということにつながるように思うのです。
 編集者の佐々木照美さんには、童話としてはまだまだ未完成だった文章にアドバイスをいただき、もうひとつの命が吹きかけられました。
 さらに高橋貞二さんの素敵なイラストによってこの物語がひとり歩きを始めるのではないかと夢見ています。
 最後に、実家で自然農法を営む母と兄、昨年他界した父、叱ってくれた姉に感謝。仲間に感謝。

 

講評…自然破壊への怒りが支えた骨太の作品

 入賞作『星をまく人』は、童話としては珍しい骨太の作品です。物語の舞台となるのは、南の海に浮かぶ小さな島。
 枝サンゴの散らばる海辺には、海鳥が飛び交い、夜になると北から南へ、満天の星が流れます。
 壮大な島の風景から、カメラをズームするように作者は草むらの小さな光に目を移します。この島にもホタルがいたのです。
 青い月の光をいっぱいに浴びた南の島は、次第にファンタジーの小さな宇宙に変わります。
 物語は、意外性に富み、思いがけない所へストーリーは展開していきます。
 “じんじん”と呼ばれるへんくつ者のおじさんや、引きこもりの少女など少し変わった人物が次々と登場し、ホタルと不思議なかかわりを持ってゆくのです。
 ホタルは、幼虫の時から光っているということや、幼虫がカタツムリを攻撃するという話はほんとうのことです。私は、ゲンジボタルの幼虫が水に落ちたカタツムリを襲うのを見たことがあります。
 作者は、自然の観察から得たそのような事実をうまく物語の中に取り込み、生々しいインパクトを与えています。
 しかし、何といっても、物語を支えているのは、自然破壊に対する作者の怒りです。その怒りは骨太の物語の底に、静かに流れています。
 少し荒削りな所がありますが、スケールの大きい作品です。ちっぽけな世界に安住しがちな私には、大きな驚きです。

 

ニュース

2002.08.20

南島舞台に“星をまく人”「ほたる賞」に竹田さん(沖縄タイムズ)

2002.08.19

童話「星をまく人」でほたる賞 竹田弘さんがグランプリ(八重山毎日新聞)

 

ほたる賞受賞作品

第1回ほたる賞受賞作 翔べ!心のホタル

第2回ほたる賞受賞作 あの人に伝えたいこと

第3回ほたる賞受賞作 私のいじめが消えた日

第4回ほたる賞受賞作 こうぼ とべないホタル

第5回ほたる賞受賞作 ゴムの手の転校生

第6回ほたる賞受賞作 ぼくはゆうれい

第7回ほたる賞受賞作 星をまく人

第8回ほたる賞受賞作 チビちゃんの桜

第9回ほたる賞受賞作 おかあさんのパジャマ

第10回ほたる賞受賞作 いのちはどこに入ってるの?

第11回ほたる賞受賞作 メル友からのメッセージ

第12回ほたる賞受賞作 りそうのくに

第13回ほたる賞受賞作 となりのトンコやん

 

第1回ほたる賞応募作 いじめを考える作文集

 

著者紹介

■ 竹田 弘(たけだひろし) ■

 

1955年、岡山県牛窓町生まれ。琉球大学生物学科卒業。30歳を過ぎてから、南西諸島の森や海にすむ生物を題材に童話を書き始める。 2001年、財団法人日本蛇族学術研究所主催の「ヘビの文化賞」童話部門で優秀賞。 現在、新聞社に勤務。現住所・沖縄県石垣市。

 

■ 画家紹介・高橋貞二(たかはしていじ) ■

 

1954年、山形県新庄市出身。武蔵野美術大学で油絵、彫塑を学ぶ。卒業後、一貫して童画を描き続けている。日本児童出版美術家連盟会員。2001年、イタリア・ボローニャ国際絵本原画展入選。作品に「こんにちは! 盲導犬ベルナ」ほか多数。現住所・埼玉県所沢市。

 

 

読者の声

 

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