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■ ハート出版のドキュメンタル童話・犬シリーズ 


幸せな捨て犬ウォリ


日本と全然違うオーストリアのお話


小学校中学年以上向き

マルコ・ブルーノ 著 久条めく 画 2001.04.16 発行  

ISBN 4-89295-248-6 C8093 A5上製・144頁・定価 1320円(本体 1200円)

 

はじめに

幸せな捨て犬 ウォリ…日本と全然違う本当の動物保護センターの姿(ハート出版)児童書・童話

 動物愛護および保護に関して、オーストリアは先進国といっていい。じっさい、国内には、たくさんの動物保護センターがある。大きな町にはもちろんのこと、小さな町にも、動物を保護できる施設が準備されている。日本にもたくさんの動物保護センターがある。
 オーストリアの各地につくられている動物保護センターは、なんらかの理由で飼い主のいない動物たち、おもに犬や猫を手厚く保護するための施設だ。

 しかし、日本はちがう。
 日本の動物保護センターの正体は、恐ろしい虐殺センターなのだ。ウソだと思ったら、自分で訪ねて、現状をみて把握してほしい。
 地元の動物保護センターのなかで、なにが行なわれているか、知ってほしい。そこにいる犬や猫たちが、「保護されてよかった」という表情をしているのか?
 死の恐怖におびえて、全身に痙攣をおこす犬は一匹もいないのか?
 みんなたのしそうに遊んでいるのか?

 保護という意味は、手厚く守ってあげることだ。苦痛を与えながら殺すことではない。日本の犬や猫は、行政に保護されているのではなく、捕獲されている。
 そのうえ、捕獲してから殺すということは尋常ではない。それも、捕獲してから数日以内。捕獲した動物は飼い主からはぐれてしまった迷子かもしれない。それなのに、はやいところでは、三日目に処分≠ウれてしまう。
 たったの三日! いつもの怠慢なお役所仕事とくらべると、実に素早い。なぜなんだ!
 飼い主が迷子届けをすこしでも遅れて出した場合、間に合わない。それでも「保護をしている」と涼しい顔の行政。

幸せな捨て犬 ウォリ…日本と全然違う本当の動物保護センターの姿(ハート出版)児童書・童話

犬と人が自然にとけ込んだオーストリアの暮らし

 しかしあいつらはバカではない。ぎゃくにたいへん利口な人たちだ。事実をかくして、臭いものに蓋をするという仕事に関して、日本の官僚はプロフェッショナルだ。
 だから日本の犬や猫は、表向きでは、保護されているということになっている。言葉はやわらかいし、やさしいイメージを広げるには、もってこいの表現じゃないか。
 しかし、このやさしいイメージの裏では、私たちの耳にとどかない悲鳴が殺処分センターにひびきわたっている。これが日本流の「保護」だ。みっともないよね。
 だから殺処分センターをぜひ、見学してほしい。自分の目で確かめることがいちばんだ。百聞は一見にしかず……って、日本のことわざにもあるじゃないか。国民の税金をつかって、行政はなにをやっているのか、とくと見ていただきたい。

 しかし一つだけ、断っておきたいことがある。それは、
 「捨て犬や捨て猫が多いから、しかたがない」
 という反論は聞きたくない――ということだ。はっきり言って、それは理由にならないからだ。本気で取り組んでいけば、その問題はかんたんに解決できる。

 オーストリアはけっして理想的な国ではない。政界では汚職や横領のようなスキャンダルが多発しているし、経済の状態もけっしてほめられたものじゃない。でも、誇れることがある。国の自然環境や動物保護に関しては、EU(欧州連合)のなかでは、オーストリアは高い評価を受けている点だ。動物愛護や保護のことを考えると、オーストリアは日本より一歩ではなく、百歩進んでいる。私は胸をはって言える。

 今回の物語の舞台になっているのは、オーストリアのケルンテン州にあるフィラッハという小さな町の動物保護センターだ。
 フィラッハの動物保護センターの設立は八十年以上も昔だ。国の政治的経済的な荒波にも負けず、たすけを求めている動物たちを救済してきた。当然のこと、この施設で保護されている動物たちは、処分されることはない。絶対にない。
 保護センターなので、看板どおり動物は手厚く保護され、里親も見つけてもらえる。あたり前といえば、あたり前なことだ。

幸せな捨て犬 ウォリ…日本と全然違う本当の動物保護センターの姿(ハート出版)児童書・童話

犬と人が共存する街、フィラッハ

 日本では想像できないだろうが、動物の病気やケガにそなえて、施設内には、手術もできる治療室と病室がととのっているし、担当の獣医もいるのだ。しかも、この施設に保護されている動物たちの八割ちかくは、里親に引き取られ、人生の再出発が可能になる。

 ぼくはオーストリアの保護センターをなんども取材したが、犬をつなぐためのチェーンを見たことがない。犬たちは楽しそうに走りまわったり遊んだりして毎日をすごしているので、性格はおだやかだ。ぼくが訪れるたびに、いつもたくさんの犬たちに囲まれ「熱烈歓迎」をうける。みんなおだやかな表情。牙をむき出しにして、怒っている犬は一匹もいない。
 この風景を見ると、このコたちが、つらい過去をもち、身勝手な人間の犠牲者だということを、つい、わすれてしまいそうだ。
 センター内の雰囲気は、それくらい明るくて楽しい。
 死の恐怖におびえている日本の犬や猫たちとは対照的だ。

     * * *

 フィラッハの動物保護センターで歓迎してくれた犬たちと行動をともにしない、一匹のセントバーナードがいる。
 大きな木の陰で昼寝中だ。あのコのことがどうも気になる。
 さぁいっしょにそばへいって、話を聞かせてもらいましょう。

 

 

目 次

 

 

幸せな捨て犬 ウォリ…日本と全然違う本当の動物保護センターの姿(ハート出版)児童書・童話
   ウォリ、話を聞かせて

   ブリギッテとの出会い

   町暮らし入門

   さよなら、十九歳の天使

   お母さん、病気に負けちゃだめ!

   暗闇に消える叫び

   森の死に神

   生きるという幸せ

   ウォリ、元気でね


 

 

 

著者紹介

 マルコ・ブルーノ (Marco Bruno) 

 

1945年、オーストリア生まれ。20歳のときに来日し、以来36年。映画「ナイル殺人事件」の主題歌などを作詞する他に、翻訳や童話執筆、プロの写真家としても知られ、多彩な活動を展開している。著書にポプラ社刊「ペットはぼくの家族」。ハート出版刊「マルコの東方犬聞録」「幸せな捨て犬ウォリ」「犬に尊敬される飼い主になる方法」などがある。 現在、犬や猫の里親探しに奔走、日本の動物行政の不備を見かねて、その改革に立ち上がっている。犬や猫に限らず、いのちあるものを「物」としか見ない日本の行政や、今の日本人の感性に疑問を持ち、昨今の青少年の心の荒廃は、こうした動物蔑視、いのちの軽視に原因があるのではないかと、考える一人である。 なお動物愛護支援の会のHPで会員募集、里親探しを行っている。

 

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2004.03.17

「痛快!エブリデイ」にマルコさん出演

2004.03.06

外国から見た日本の動物愛護〜ここが変だよ!日本の犬事情〜

2003.08.27

「愛犬チャンプ」でマルコさん紹介(愛犬チャンプ2003年10月号)

2003.07.26

第2回WANWANPARK

2003.07.18

犬に尊敬される飼い主になる方法(足立よみうり2003.7.18)

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飼い主のしつけ本(東京新聞夕刊2003.06.18)

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犬のために何ができるだろうか?マルコ・ブルーノ(いぬのきもち2003年2月号)

2002.05.09

「美しい町」(TBS系)でマルコ・ブルーノさん捨て犬問題を語る

 

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