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■ 新引きこもりからの旅立ちシリーズ 3 ■ 心のサインを見逃すな わが子を透明な存在にしないために 富田富士也 著 2000.07.28 発行 ISBN 4-89295-166-8 C0037 A5並製・192頁・定価 1650円(本体 1500円) |
内容紹介 |
■人間関係希薄化のツケ 生まれもって「悪い子」で誕生した子どもはいません。誰だって心をオープンにし、素直に生きたいに決まっています。悪態もつきたくはありません。幼児の無邪気さになぜ大人はほほ笑むのでしょうか。それは「無防備」だからです。人を信じきって生きているから、見ているこちらも安心感に包まれていくのです。 学校や家庭に「心の居場所(人間関係)」を得られず、つらく、寂しく、心細い思いを背負いながらさまよう子どもたちと関わって、私も二十年を迎えようとしています。相談室を訪ねてくる親や子の抱える状況は固有の苦しみで、各々、その「生き地獄」は語り尽くせるものではありません。そしてなかには、「差し違え」しかねない混乱の親子もいます。そんな不安を持てあました、とくに子どもが「とにかく聞いてほしい」と訴えます。 その口火は、勝手に周りの大人(親や先生)から「問題児」というレッテルを貼られたにもかかわらず、その課題を一人背負わされてきた悔しさです。それは「誰も頭でばかり聞いて気持ちを聴いてくれなかった」ために、人とつながっているという生命の実感がつかめなかったことです。 来談してくれる子どもたちに共通することがあります。「肯定された」という感じ方が乏しいのです。だから自己評価が低い。そこでその心を見透かされまいと、ときには哀れになるほど突っ張るのです。「鼻持ちならないプライド」と言ったらいいでしょうか。そして「悲しすぎるコンプレックス」です。徹底した自己否定と言ったらいいでしょうか。いずれも激しく存在を「顕示」しようとする。この激しい感情の振幅が心を砂漠にしていくのです。 ところでそんな子どもたちが面接を終えると一様につぶやく台詞≠ェあります。「かつて安心して弱音やグチを吐けなかった。苦しい気持ちをわかろうと、ただ聞いてほしかった。アドバイスも励ましもいらなかった」。人は自分の気持ちをしっかり聞いてもらえたとき、最も大切にされていると思うものです。自己肯定感はそこから生まれます。 戦後五十年、日本社会は「頑張れ、負けるな、弱音を吐くな」と子どもたちを学歴・能力社会に強迫的≠ノ追い込んできたのではないでしょうか。「いい子」はそうしてつくられたように思います。 そして「いい子」の少年の重い歴史はいまだ明らかにされていません。この途中下車できない「管理社会」には、弱音を吐きたい気持ちを一つひとつ聴いて、心を拾っていく「暇」はなかったのでしょうか。コミュニケーションすることへの無気力化≠ノ私たちは気づかなかったのです。人は気持ちを聴いてもらえることで、曖昧さやわずらわしさに耐え、踏ん張る力も身につくのです。それが人間関係に強く、やわらかくなれる秘訣≠ネのです。 気持ちを交わし合うことの希薄化は、そのまま人間関係の合理化につながります。手間暇かけて育て上げる人間関係のコミュニケーションの手抜きは、人間不信と関係の取り結び方(間とか距離感、コミュニケーションスキル)への自信のなさとなり、なかには人に対する怯えばかりを増幅させていく子どもたちも生まれました。 来談したある子が私に言いました。「僕はケンカして仲直りする方法がわかっていれば登校拒否しなかった」。人は人なくしては生きていけない。触れあいたいのにどうして触れあえばいいのかわからない。だから対立するのが怖く、感情を抑圧するが、限界を越すと逆に激しく「すっきり」するまで攻撃してしまうのです。まるで劇画を見るようです。 励ましや、アドバイス、指導、躾の前に、気持ちを聴いてもらえない悔しさ、ケンカして仲直りできない苛立ちが、昨今の極端≠ネ少年犯罪を引き金になっているのだとしたら、それを戦後五十年の人間関係の希薄化のツケととらえて、私たちの周りの生活の営みを見つめ直す契機にしたいと思うのです。学校完全五日制実施二〇〇三年に向けてめざす「生きる力」とは「ケンカして仲直りできる」楽しい生活空間の具体的創造ではないでしょうか。 ──本書は「わが子を透明な存在にしないための50の知恵」を改題したものです。 |
目 次 |
第一章 わが子を「透明な存在」にしない五〇の知恵 1・他人に迷惑をかけないよう叩いて躾をしてきました 【人は互いに迷惑をかけ合いながら生きていくもの】 2・子どもの独立心のため個室を与えたが部屋に入れてくれない 【心にふれるときは、枕詞≠つけ、ノックして】 3・体が弱いので先回りして心配し、過保護にした 【子どもの人生の主人公≠ヘ子ども自身】 4・弱い体を強くしようと思って「頑張れ」を連呼、厳しくした 【子どもに無力だからこそ頑張れ≠ニ励ます親心】 5・親の身勝手な葛藤をつい子どもにぶつけていた 【葛藤のコミュニケーションに心がけて】 6・他の子に手がかかり、この子を放っておいたので 愛情のない親と思われてしまったようだ 【問題のない「いい子」ほど報われなさをもちやすい】 7・私が神経質で注意しすぎ子がこだわる性格になった 【絶対表現を減らして、融通表現を増やそう】 8・子どもが小さいときに私が入院。 そのときの子どもの不安がいま精神的な未熟さに。 【気持ちを理解する努力を怠ると親は子に安易に詫びたがる】 9・何事も家族で話し合い、とことん議論をたたかわせる 【つまらない、くだらない話が、実はとても大切】 10 ・生活を贅沢にして、耐えることを教えていません 【耐えられることは夢中になっていること】 11 ・子どもの前で夫婦ゲンカをしないように努力しています 【ときに人は理解し合うためにケンカもする】 12 ・「一生がダメになるぞ」と子どもを諭していました 【たまには親の真意≠照れないで伝えたい】 13 ・いじめられて泣いて帰る子を、歯がゆくて叱っていた 【叱咤激励の前に、いたわる声かけを十分に】 14 ・子どもに「あの子とは付き合わないほうがいい」と言った 【人間関係は手間暇かけてつくるもの。すぐ結論づけない】 15 ・何をするにも遅いのでつい手を貸し口を出してしまう 【ぐずぐずするのは心に不安があるから】 16 ・夫の存在が薄いので『父親』の役割ばかりをしていた 【母性の上に父性のあることが、意味をもつ】 17 ・読書は人を育てると思い、好きでもない本を 子どもに強引に読ませています 【ときには立ち止まって見つめたい「わが子がなじむ世界」を】 18 ・よく泣く子だったのでわがままで泣いていると放っておいた 【泣く子と抱く子は育つ】 19・夫婦の時間も大切と子を寝かしてダンス教室に通っていた 【不安なときは何もしなくていいからただ側にいてあげたい】 20 ・子どもに「みんな頑張っているんだ」と口癖のように言う 【声かけ合える心の距離を保てたからこそ 子は親の背を見て育つ≠アとができる】 21 ・キャリアを生かしたくて子どもを保育園にあずけ働きに出た 【親になって「得」した、そんな子どもとの響き合いを】 22 ・いけないと思いつつ感情的に叱るのをとめられなかった 【親自身が弱音の吐ける場を見つけよう】 23 ・とにかく静かで、穏やかで「平和な家庭」でした 【せめぎ合って、折り合って、お互いさまの毎日を】 24 ・夫の気分にむらがあり、怒らせないようにと 母子で気を使い、息をひそめてきました 【理解し合う努力をしつつも、現実的な対応を】 25 ・隣近所の目が気になり、家庭内のいざこざを 聞かれないように雨戸を閉めます 【ケンカするほど仲がよい】 26 ・子どもと遊んでも理屈が先行し子どもをうなずかせてばかり 【子どもの気持ちに寄り添って遊べたらいいのにな】 27 ・子どもらしい質問が「バカな質問」「低次元の考え」と思える 【何でも正しければいいってもんじゃない】 28 ・心配事が多く、子どものことまで気持ちがいきません 【人間関係は、組み合わせで変容していく】 29 ・自分が母親に甘えられなかったので どう甘えさせていいかわからない 【子どもに弱音を吐いてもらえる親になろう】 30 ・自分が人付き合いが苦手だったので、 子どもに友だちをつくってあげられない 【伝えたいことは、人間関係をあきらめないこと】 31 ・姑が子どもを異常に甘やかすが、 面倒を見てもらっている手前、何も言えない 【思いやりのひと言で、人は相手を受けいれる余裕をもつ】 32 ・姑が子どもに親の悪口を言うので 息子は親の言うことを聞かなくなった 【いずれにしろ、子は親を意識している】 33 ・「わが子かわいさ」の落とし穴に気がつきませんでした 【ときに子への親の思いの深さが、押しの強さになっていく】 34 ・子どもの部屋には、決して入らないようにしています 【子どもの部屋を徹子の部屋≠ノ】 35 ・妹誕生後「お兄ちゃんでしょ。がまんしなさい」が口癖に 【具体的にわが子に届けたい必要≠ニいうメッセージ】 36 ・わが子を近所の人や実家の父に抱かれると、とても不安 【子どもは親の装飾品≠ナはないはず】 37 ・嫌なことがあっても、子どもの前では笑顔をつくっています 【ないから憧れるサザエさん≠フ世界】 38 ・子どもは笑うものと信じていたので、 あやしても笑わないわが子が憎らしい 【みんな違って、みんないい】 39 ・呑み込みが悪く、親の思い通りにならないわが子を、 ついつい叩いてしまいます 【励ますことは、子どもの苦しみから逃げ出すこと】 40 ・手のかからない子どもであることに何の疑問ももっていません 【まずは心がけたい「いたわり」のひと言】 41 ・門限もなく、必要に応じて小遣いもあげている。 いい親であろうと心がけている 【「いきなり」型から「ひきずり」型の子育てを】 42 ・外から帰ってきていろいろ言う子どもの話に、 忙しくて聴くことをしていません 【「おかえり」の後はまず聞き役に徹して】 43 ・ふざけまわる子どもを近所の手前もあって叱ったら、 おとなしい性格になりました 【話したくなるような聴き方を】 44 ・聞き分けのいい明るい子で期待しいろいろ習い事を 【慌てずに関わりたい「いい子」の陰の部分にも】 45 ・自己主張の強いわが子ですので、 将来を思ってずいぶんと抑えています 【「あいまいさ」に耐えられる子育てを】 46 ・下の子が産まれたら、急に聞き分けのいい子になり、 安心して喜んでいます 【受けとめた気持ちは言葉にして返そう】 47 ・親の責任と思い、学校などでのできごとを根堀り葉堀り、 聞くようにしています 【家は決裁する場ではなく、気持ちを交流し合う空間】 48 ・子どもは勉強と遊びが仕事。家事の手伝いは 極力させないようにしています 【人は孤立した無縁な存在ではないはず】 49 ・ケンカをすれば両方傷つく。わが子にはケンカだけは させないようにしています 【人に癒やされるには、傷つくリスクも背負う】 50 ・子どもは天真爛漫であるはず。わが子に笑顔がないので 悩んでいます 【どうしても喋らなくてはいけないんですか?】
第二章 いま中高生は何を親に思う とりあえず僕らの「つぶやき」を聞いて 【わが子を「透明な存在」にしない関わり チェックリスト】
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著者紹介 |
■ 富田富士也(とみた ふじや)■ 1954年、静岡県御前崎市出身。教育・心理カウンセラーとしてコミュニケーション不全に悩む青少年への相談活動を通じ、絡み合いの大切さを伝えている。「引きこもり」つづける子どもや若者、その親や家族の存在にいち早く光をあて、「治療的」でないカウンセリングの学びの場を全国的に広めている。総合労働研究所所員、千葉明徳短大幼児教育科客員教授、千葉大学教育学部非常勤講師等を経て現職となる。
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