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もう保育で悩まない
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■ ハート出版の教育書 ■ もう保育で悩まない 新保育カウンセリング プロの悩みから生まれる
富田富士也 著 2008.05.24発行 ISBN 9784892955860 C0037 A5並製・288頁・定価 2200円(本体 2000円) |
まえがき |
保育者だって心を抱きしめられたい 保育もカウンセリングも人間関係です。だから「せんせい」と保育現場で呼ばれるみなさんもカウンセラーの私も人間関係を仕事≠ノする職業人です。そして心の悩み(メンタルヘルス)のほとんどが人間関係から起こることを考えると、保育者にとってメンタルヘルスも職業人として避けることのできない本質的テーマであり、個々人の内面的努力だけですませていくわけにはいきません。いわゆる「保育の質」を高めるためにも保育者ゆえに抱えている諸々の心の悩みを保育の人間化≠ニして分かちあいたいと私は思い、相談活動にあたってきました。 心の悩みは一人では起きません。関係の中で起こります。つまりつながって切り離せないということです。そして常に変化していく関係にあるのです。日本文化で言えば縁起と無常の人間観です。人の成長はその関係の中で育まれているのです。保育もメンタルヘルスもカウンセリングも人間関係の基本を考えるときは、ここに立ち返ればいいのです。だからどうしても家庭での悩みが職場に持ち込まれ、職場での悩みが家庭で八つ当たり%Iに起こってしまうこともあるのです。私はこの人間らしい現実を無理に否定しないで職場の仲間同士で語り合うことができたら、子育ての心である共生的人間関係が築かれていくと思います。これこそ、その職場の人間関係づくりが子どもたちや保護者の生きる励みになっていくのです。「せんせいの笑顔が子どもの笑顔に、子どもの笑顔が保護者の笑顔に、保護者や子どもの笑顔がせんせいの笑顔に」というわけです。循環的人間関係です。 身近でいつでも取り組める職場のメンタルヘルス活動の第一は、安心して弱音や愚痴が言えて、聞ける職場集団を形成することです。 ところが保育現場も人間関係の合理化、希薄化、そして評価・成果主義の導入によって職員が共生的関係から孤立しやすい環境になりつつあるようです。評価と人間関係の効率化の中で育ってきた偏差値世代を中心にした保護者の価値観によって「保育サービス」が商品化≠ウれ「共同保育」の心が見えにくくなっている現実もあります。いわゆる消費者センターにでも訴えるような「保護者の苦情対応」によるストレス過多の問題です。 保育者ばかりが「利用者」である子どもや保護者の心を抱きしめることが求められつつあるのです。抱っこしているほうが抱っこされている、抱っこされているほうも抱っこしているという関係を取り戻すことが保育者の心の悩みの根っこにあるのです。 保育・福祉現場は本来、つながりの中で人間が人間であることに目覚め喜ぶ場であるはずです。労働の人間化≠ナす。またそこに意欲をもって保育の道を選択した人が保育関係者だと思います。ところが現実は燃え尽き、バーンアウトぎりぎりのストレス状態の保育現場です。人は人に傷つき、人に癒される、という実感を得られないまま保育現場から去っていく職員が増えています。 人間関係を仕事にする職場のメンタルヘルス、ストレス対策についてはこれまでいろいろな活動が展開されてきました。その多くは組織としての健康管理上のシステムづくりや個人のストレスコントロールです。しかしより効率優先の職場環境にあってこのテーマは深刻化するばかりです。そこで本書では、手間をかけてつながっていく人間関係とはどのようにとらえればよいのかを具体的な悩みにそって、臨床的に考えてみることにしました。保育現場のメンタルヘルス活動をすすめるうえでの「心田を耕す」地ならしと思ってください。 そしてその手がかりをカウンセリングマインドにたずねてみました。読み終わり、ちょっと視点を変えて職場の日常を振り返ってみれば、意外にもメンタルヘルス対策≠ネどと仰々しく言わなくても、出退勤の「おはよう」「またね」のひと声にすでにその取り組みがなされていたことがわかるでしょう。気づかなかったのは「人間関係の中で人は心傷つき、癒される」ということを当たり前のこととして互いに深く見つめることなく無自覚になっていたからです。 人は孤独な存在です。だから人とつながるのです。心に悩みを抱えると不安や心細さを招きます。それはこの悩みを一人で背負わなければならない孤独感です。そしてつながるとは、信じる勇気をもって身近な仲間に胸の内を小出しにして、おしゃべりしていくことです。すると抱える現実は何も変わらなくても気持ちは不思議に軽くなるものです。この軽さが現実をそのまま受け入れる心の余裕となり、変化を生むのです。 ぜひともこの喜びを子ども、保護者にも伝えていこうではありませんか。そのためには悩みを人とつながる糧として主体的に取り入れ、人生を豊かに生きていきたいと思います。その心が「レッツ・ゴー! 保育カウンセリング」です。 |
目 次 |
まえがき 1章 強い人間なんていない 私、頭、ワルイんですわたし、ガンコなんです 言い過ぎて、後で落ち込む私なんです 恥ずかしながら、相談を意見にしてしまうのです 成人したはずの息子のひと言に園長としての身がつらく 独身では園長になれないのですか 折り合う、わかり合えることを、若い人に伝えきれないのです 三十代で保育士になり、見られることばかりを気にしていました 保育に充実感がないまま定年を迎えるのでしょうか 泣く悔しさがあったら、頑張りなさい、と思ってしまうのです 先輩先生のいびりに、思いやりの気持ちがもてません 新しい園に異動することになり不安です 2章 セルフカウンセリングQ&A Q1 園長と職員の板挟みに苦しんでいますQ2 励ましても辞めていく人が多いのです Q3 子どもの叱り方がわかりません Q4 無責任、やる気のない先輩に失望しています Q5 障害のある子に優しくなれないのです Q6 退職勧告にも思える異動にあいました Q7 保護者に対して恥ずかしい我が家の家庭事情です Q8 身は一つ、どちらを選択したらいいのか Q9 子どもたちや親から馬鹿にされているような気がします Q10 子どもの親と対立してしまいました Q11 彼氏がいないのは保育士だからでしょうか Q12 心の病気を正直に言うと採用されません 3章 切なさに寄り添う保育カウンセリング 寄り添う言葉1 うなずくことが、はじめの一歩2 自己開示あればこそ、話しやすいものです 3 掌を合わせて鏡≠ノなれば、心はほてってきます 4 不安、悔しさ抱っこ≠オて還る家 5 理解できないときこそ枠組みの再構成≠ノ心がけて 6 伝えたい思いは自らお手本≠ノなる覚悟をして 7 迷ったら、支持して 8 気づいても変われない心を分かち合い≠オて 9 怒ったり、なでたりしながら存在を承認して 10 まわりが気になりだしたら、心の根っこに尋ねて 11 心がブロックしたら素直に弱さを語り、聴聞して 12 不満はないけど、気持ちの晴れないときは関係を斉えて 13 他者への期待は信頼、こだわるのは防衛 14 報恩に気づけば、感謝とともに行動化≠ヘ高まっていく 15 間≠とり話す自己表現≠フ工夫が、相手の心を開いていく 16 悲喜こもごもを、安心して語れてこそ清浄心≠ニ出会える 4章 園舎に入ったらみんな「せんせい!」 〈お手紙紹介〉 お手紙1 夢をもう一度2 私の宝物は…… 3 みんなに支えられて 4 卒園生からもらった写メール 5 言葉にならない子どもたちの「せんせい」の声 6 暴れる子と仲直り 7 私はいつでも教え子の陰の応援団 8 せんせー おかえり! 9 子どもにとって、はじめて接する大人が「せんせい」 10 園児の後ろ姿に「ありがとう」 11 一緒に遊べる幸せ 12 こんな私でも人の役に…… 13 卒園児から、ご褒美をいただく 14 本物の「先生」をめざして 15 園で子どもたちから声を掛けられる先生でいたい 16 おいしいんだもん、とお代わりにきてくれる子どもたち 17 子どもたちの笑顔に励まされ 18 私を支えてくれた子どもたち 19 たった一日だけの付き合いだけど…… 20 今日の給食はなに? おやつはなに? 21 せんせい何しよん? 22 せんせいのこと、お母さんと思ってるんじゃない? 23 その笑顔が私の不安を吹き飛ばす 24 戸惑いの一歳児担当 25 毎日がドラマチックに あとがき 巻末資料 1.「気分転換」を知らせる保育者ストレス傾向チェックリスト 2.緊急アピールとして――保育職場にリスナーとファシリテーターを |
あとがき |
ケアする人がケアされてこそ本当のケア |
著者紹介 |
■ 富田富士也(とみた ふじや)■ 教育・心理カウンセラーとしてコミュニケーション不全に悩む青少年への相談活動を通じ、絡み合いの大切さを伝えている。「引きこもり」つづける子どもや若者、その親や家族の存在にいち早く光をあて、『保育カウンセリング』の学びの場を全国的に広めている。総合労働研究所所員、千葉明徳短大幼児教育科客員教授、千葉大学教育学部非常勤講師等を経て現職となる。現在「子ども家庭教育フォーラム」代表。文京学院大学生涯学習センター講師。日本精神衛生学会理事。日本学校メンタルヘルス学会運営委員。日本外来精神医療学会常任理事。NPO法人「保育ネットワーク・ミルク」顧問。「ケアする人のケアを考える会」代表。「心理カウンセラーをめざす研究会」代表。
■主な著書 |
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