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■ 保育カウンセリング実践編 ■ 子どもがこっちを向くとっておきの聴き方 「17歳問題」の芽は幼児期の人間関係にある 富田富士也 著 2001.05.24 発行 ISBN 4-89295-181-1 C0037 A5並製・240頁・定価 1650円(本体 1500円) |
内容紹介 |
●この本を読んでいただく前に…… 言葉の向こう側にある、子どもの心が見えますか? 子どもたちは、つぶらなひとみで、その小さな口で、いつもこんなふうに叫んでいます。 せんせい、おかあさん、おとうさん、おばあちゃん、おじいちゃん…… 『ねぇ、こっち向いて』 と。でも、日常の平穏な生活のなかでは、子どもたちはその気持ちを素直に言葉や態度にあらわしますが、心がちょっと陰ってしまったときは、 「怒られるかもしれないなぁ」 「嫌われるかもしれないなぁ」 と心配になって、口や態度がぎこちなく不自然になってます。すると、子どもなりの遠回しな言い方、態度で、自分の気持ちを伝えようとします。 さて、子どもが次のようなことを、言いました。あなたは何を感じますか? (1)お母さん、今夜は僕と寝ないで、お父さんと寝てもいいよ (2)おばあちゃん、ママが好き? (3)おじいちゃん、保育園に行くとき、手をつないでくれる? (4)お父さん、幼稚園がお休みになったら、何しようか? (5)せんせい、ぼくのパパとママがね……もう、ぼく、ケンカはイヤだよ さて、次は態度です。子どもが次のような態度を示したら、あなたは何を感じますか? すねる いじける ひょうきん 意地っ張り おねだり 子どもでなくても、こういった態度は、ついとってしまいがちですね。うまく言葉で表現できないから、あるいは、言葉にしたくても、それを言ってしまうとお終いになってしまいそうだから、言えないときは、こんなふうな態度になってしまいます。 大人も子どもも、そういう意味では同じです。 でも、なぜなのでしょうか、大人が子どもに対するとき、高みに立った言い回し、つまり「お説教」や「諭す」ような言い方になってしまいます。あるいは、「頭ごなし」という場合もありますね。 先ほどの1〜5までの「子どものつぶやき」に対して、こんなふうに答えてしまったことはありませんか? (1)何、バカなことをいつまでも言っているの (2)そんなこと、子どもが気にすることじゃないよ。大人の話に子どもが口出しする んじゃありません (3)さっさと一人で保育園に行けるような、元気な子どもにならなければ、ダメだよ (4)えっ、またどこかへ連れて行けっていうのかい。お母さんと行ってきな。お父さ ん、家で仕事があるから (5)ダメよ、強い子にならなければ 大人として、親として、あるいは先生として、子どもの教育のためによかれと思って口にしてしまう返事です。アドバイスであり、励ましです。でも、子どもにとっては何となく納得できないものです。何がどう納得できないのか、子どもでもわかりませんから、なんとなくふくれっ面をして、 「うん」 と生返事をしてしまいます。すると、 「返事は、ハイでしょ」 などと、また突っこまれ、また心が陰っていきます。 本文でもふれますが、「眼聴耳視」という言葉があります。私は勝手に「げんちょうじし」と読んでいるのですが、その意味するところは「眼で聴き、耳で視る」と、これまた勝手に解釈しています。陶芸家の故・河井ェ次郎先生の言葉ですが、保育カウンセリングにおいても、とても意味深い言葉だと思っています。 眼聴耳視の気持ちで、先の1〜5までの言葉を「眼で聴き、耳で視る」とすれば、次のような返事が考えられないでしょうか? (1)「心配していたのね。大丈夫よ。明日起きたらあなたの隣に、お父さんが寝てい るよ」(感情の明確化) (2)「ママはおばあちゃんのこと、好きなのかな。おばあちゃんはうまく自分の気持 ちを言えなくてねぇ」(自己開示) (3)「そうだね。手をつなぐことを忘れていたね。ごめんな」(共感) (4)「何しようか。そうだ、海に行こうか。泳ぐぞ、いっぱい」(くり返しのミラーリング) (5)何かあったのね。イヤなことあったのね。がまんしたのね」(支持・ほめる) いかがでしょうか。カウンセリングが、励ましや、諭しや、戒め、アドバイスのためにするのではないことが、おぼろげながらもみえてきたでしょうか。カウンセリングとは、傾聴・共感です。そのことによって、人は肯定され、安心感を得ることができるのです。 保育カウンセリングは、こうした人間関係から肯定感を獲得する営みです。 子どもに理屈は通用しません。ただただ「気持ち」の交流です。交わりです。 理路整然として、一点の間違いもない完璧な父親と母親、先生、兄弟に囲まれた「子ども」(あなた自身でもいいです)は、だれに懐くでしょうか。 一生懸命だけどドジで、失敗しがちなお母さんやせんせい、隣のおじいさんには懐いていくな、と思いませんか? そう、あのおじいさんは、あなたが失敗したとき、話を最後までじっくり聴いてくれて、 「わしも小さいころから、失敗ばかり。つらいよな。泣きたくなっちゃうよな。しょうがないよな。いっぱい泣いたら、すっきりするよ」 といつも最後に、あなたの頭をなでてくれました。懐くとは「懐」。 あなたはだれの「懐」に飛び込んでいきたいですか? あなたはあの子に、懐いてもらっていますか? さあ、ごいっしょに保育カウンセリングの実践編を学びましょう。
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目 次 |
この本を読んでいただく前に……
プロローグ
1章 あなただけじゃない 僕は一人前≠フ人間になりたいんです
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著者紹介 |
■ 富田富士也(とみた ふじや)■ 1954年、静岡県御前崎市出身。教育・心理カウンセラーとしてコミュニケーション不全に悩む青少年への相談活動を通じ、絡み合いの大切さを伝えている。「引きこもり」つづける子どもや若者、その親や家族の存在にいち早く光をあて、「治療的」でないカウンセリングの学びの場を全国的に広めている。総合労働研究所所員、千葉明徳短大幼児教育科客員教授、千葉大学教育学部非常勤講師等を経て現職となる。
■主な著書 |
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